絶対命令【文スト】 (ページ36)

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『……主様が』

ふと、黙っていた彼女が口を開けた。
思わず目線が向くと、どこか寂しそうに辛そうに口を開けた。

『いません』

「姐さんは？」
『…尾崎紅葉は主様の契約を守れてません』

彼女はそう言って力無くベットに横になった。
…瞳は彼と同じく真っ黒で、簡単に消えてしまいそうだ。

「契約はどんなものだい？」

ふと太宰治はそう言った。
興味がある。

彼女は直ぐにそれを察し、顔を向けた。

『なって、くれるの？』
「契約を聞いてからかな」

『……』

すると彼女は少し考えた。
でも、諦めたように口を開けた。

内容はこうだった。

1.契約主が死んだり契約を破れば無効。
2.1週間に1度は必ず顔を合わせる。
3.衣食住を揃える。

4.契約を交わした者の言うことは必ず聞く。

『以上です』

彼女は静かに4つを告げた。
_尾崎紅葉は1つめの物があったらどれだけ大金を積んでも、彼女は前の主様を裏切られなかった。

太宰治は彼女をじーっと見た。

「4つ目は君のだね」

『はい。
これは契約ですから、お互いのすることをお互いが把握しておく必要がありますから。』

すると彼は少し悩み「私が主になるよ」と笑顔で言ってきた。
彼女は目を見開け、太宰治を見た。

『本当に？』
「嗚呼、嘘はつかないよ」

『……。
手を貸してください』

そういう彼女に太宰治は片手を出すと、彼女は彼の手に口付けをした。
柔らかな唇が薬指の指先に当たり、彼は驚いた。
するとﾋﾟｮｺﾝ_と耳が元気に動いた。

『よろしくお願いします。主様』

彼女はそう言った。
_相変わらず表情は1㍉も動かない。

でも、彼は彼女がとっても喜んでいることがよく分かった。
ほんの少しだけ目元は明るくなった気がした。

「主様呼びは慣れないんだけど」
『では、太宰様に元の呼び方にさせていただきます』

『末永くよろしくお願いしますね』とそういう彼女は嬉しそうと共にどこかやっぱり悲しそうだ。
彼は目を細め、その感情を読み取ったが今は視線を逸らし椅子から降りた。

「歩けるかい？食事をしよう」
『はい』

2人は部屋から出た。。