絶対命令【文スト】 (ページ33)

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彼女は泣き続けた。
そして息が完全に切れると、彼女は悔しそうにした。
生きる気力を失ったように、すでに暗い瞳がもう分からなくなってしまった。

すると彼女は胸ポケットからナイフを取り出した。

「おい、何する」

男が動いた時には、彼女は自分の胸に突き刺していた。
フラリ_と後ろに倒れ、胸にナイフは突き刺さったままだった。

「ﾁｯ…捕虜が…」

男は涙いっぱいの彼女を異能力で包み、その場から立ち去った。
できるだけ揺らず傷がこれ以上開らないように持って行った。

『…う…？』
「！？」

ふと、腕の中にいる彼女は起き出した。
早い気絶からの復帰で、男は足を止めた。

『……主様は死んだんですね。夢…じゃなかった…のか…』

起きてすぐ彼女はそう呟いた。
横抱きにしているので、顔がよく見えた。
_相も変わらず無感情。
でも悲しんでいるのは分かる。

ただ、1つ、男には分からなかった。

「何故そこまであの男にそこまでこだわる」

男と彼女では彼女の方が実力が上なのはすぐに分かった。
力の差では圧倒的に弱いが、雰囲気、頭のキレ、環境への対応はものすごく早かった。
弱いのならば切り捨てればいい。
…それなのにしなかったことが、理解できなかった。

『…あの人は私を地獄から救って下さったからです。
どれだけ愚かでも醜くても恨めなかった。』

「名前などなくて、盾と呼ばれたのでも良かったのか？」

『はい。あれが私の幸せです』

「…理解出来ぬ。」

男は足を進めた。
風が吹き、黒髪は揺れた。

『私は誰かのそばに居たいんです。寂しいです。
ずっと突き放さない人__その人の為ならば盾になってなって見せます。
意思なんてなくします。
突き放さない人の意思が私の意思。』

彼女はそういった。
きっと本心だろう。
すると、彼女はものすごく眠たそうに瞬きをし始めた。
男が少し強く抱きしめると彼女は『初対面なのに何話してるんでしょうね』と口を開けた。

「…その気持ちは少しは分からなくない」
『！……あはは、よか、っ、た…で、す…』

彼女は目を閉じた。
男はもう一度足を止めたが、彼女は起きる気配はなく、息が弱くなっていた。

このままでは出血多量だろう。

男は足を早く進めた。。