絶対命令【文スト】 (ページ29)

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「いやぁ、偶然だよ。でも偶然って怖いものだね」

太宰治はにこにこしてそう言った。
_嘘だ。
分かってたんだ、彼には。
するとそのまま部屋の奥を見ては「ふーん」と口を開けていた。

「さて、A。あと何回してるんじゃ？
鴎外達は嗚呼見えて強いからのぉ、残り少ないじゃろ」

『……』

彼女の言葉にAは手首を隠した。
その様子に尾崎紅葉は笑い、太宰治は拳銃を構えた。

耳を立てて警戒すると共に彼女は動き出した。
ピョンとしっぽを使って壁に付くと、尾崎紅葉は笑った。

「遅い」
『ぁっ…』

ふと、足の着いた壁から夜叉がやってきた。
夜叉の剣が彼女の片足を傷つけて、そのまま真下に落っこちた。
彼女はすぐに起き上がり、傷ついた足なんぞ知らないようにナイフを構えた。

__不意打ちはダメだ。

すると夜叉が直接Aを襲ってきた。
Aは剣を受け止めたが、すぐに受け流すように払った。

「数字は見えるか？」
「見えないね。着物の"せい"で」

「着物の"おかげ"で行動が制限されとるんじゃろ」

そんな呑気に2人は話している中、Aは必死に受け流していた。
力の差では夜叉よりもなく、数秒も持ち堪えられない。

それに_あと1回だ。

(気軽に命を捨てれない)

主様に渡さなくちゃ。
刀を受け流しながらAは少しづつ夜叉に反撃して行った。

「…変わったようじゃ」

尾崎紅葉はすぐに察した。
すると彼女もAのそばに居き、戦いに交じった。

『っ！』

ｸﾞｻﾘ_

尾崎紅葉の短剣が彼女のお腹に刺さった。
彼女が不意にナイフを落とすと、夜叉が後ろからトドメを刺し、彼女は床に倒れ、目を閉じた。

「姐さん！」
「分かっておる」

死んだ直後は彼女は動かない。
すると彼女の異能力が光のように消えて行った。

…その時間を使い、尾崎紅葉は手首を見た。

【0】

「な、んじゃと…」

ふと、尾崎紅葉が彼女を見ると目を閉じたままだった。
息をしていない。
異能力も消えてしまった。
それに、いつもの早い復帰速度では無いため、すぐに勘違いした。

「姐さん？」
「し、死んでしもうた…＿」