絶対命令【文スト】 (ページ22)

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尾崎紅葉は首を縦にふり、どこからか軽い布団を持って来て下さった。
彼女は太宰治に掛けて、座ったまま目を閉じた。

「お主は横にならなくて平気なのか？」
『はい…立って眠ることが多いので気にしないで下さい』

「太宰がすまぬのぉ。
明日はいいベットで寝かせるから今夜は頼んだぞ」

『はい…』

そう短く話して彼女はもう一度眠り始めた。
尾崎紅葉は2人を見つめては、電気を消し、その部屋から去った。
現在、深夜2時。

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夜が明け、日が昇った。
太陽の光が窓から入ってくる午前7時。
ふと、ある男が目を覚ました。

「……あれ？」

目を開けると視界には膝枕をしてもらった女の子が眠っていた。
太宰治は布団に気づき、体を起こした。
それと同時に頭を押えた。

(スッキリしてるような…)

「起きたかえ、太宰」
「！」

ふと、そんな優しい声が耳に入った。
窓際を見ると、尾崎紅葉が太陽を背にこちらを見ていた。
太宰治は目を丸くしたと共に焦った目で尾崎紅葉を見た。

「今、何時だい？」
「朝の7時じゃ」

「嘘だ…なら私はここで眠ったのか！？」

思わず手を強く握った。
するとぎゅっ_と柔らかい感覚があり、片手を見るとまだ眠っている彼女と手を繋いでいた。

「そうじゃ。声をかけても起きなかったぞ、
珍しいこともあるんじゃのぉ」

尾崎紅葉は物珍しい目で太宰治を見た。
彼は繋いだ手を外し、彼女を横にしては布団をかけていた。
その目はどこか気まずそうに視線を逸らしていた。

「……」
「それで？寝心地はどうじゃった？」

好奇心を言葉にした。
太宰治は溜息をつき、口を開けた。

「悪くなかった」

「なかなか寝つきが悪いと言っとった割にはぐっすり眠るんじゃのぉ」

「……そこが謎なんだよ。
私も本気で眠るつもりはなかったのにね」

__本当に、悪夢も見ない素晴らしい夜だった。
悪夢を見て嫌な気をしたくないから徹夜など色々してきたのに、彼女に安心して眠ってしまったのだろうか？

太宰治はソファに座って色々な思考を巡らせた。

だが不意に視線を逸らし、彼女を見ると静かに眠っていた。

「…無防備」
「先程まで太宰もそうじゃったんじゃぞ？」

「うるさい」