絶対命令【文スト】 (ページ21)

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手を離した後、太宰治はパタン_と彼女の方に向けて倒れた。
彼女はぴくっ_と一瞬体が驚いており、彼は彼女の膝の上に頭を置いた。

『……あの？』
「撫でるなと言われたら暇じゃないか」

「仮眠だよ、仮眠」と彼はそう言って膝の上で目を閉じた。
彼女は膝枕なんぞしたことがなく、ここから応用を利かせて動くことなんか出来なかった。

『……』

彼女は距離が近くなった太宰治を見た。
よく見たら隈が出来ていた。

(眠れてないのかな)

同じ夜の世界の者。
確かに睡眠時間は短く、暗殺者に気をつけてずっと気を張ってなくちゃならない。
眠りたい時に眠れない悩みなんて尽きないくらい溢れ出る。

(今くらいは静かに眠らせてあげたい)

______
_

1時間後…

隣の部屋から尾崎紅葉が出てきた。
暇な時間に書類仕事を終わらせていて、姿を現した。

「？」

ドアを開けると太宰の姿が見えず、彼女の後ろ姿のみ見えた。
静かに近づいても体制は変わらなかった。
彼女が居るソファの全体が見える時まで近づくと、ふいにﾋﾟｸｯ_と動き出した。

『あ、れ？』
「おや、起こしてもうたか？」

同じように彼女は眠ってしまっていたようで、寝ぼけた目で尾崎紅葉を見ては黙って見ていた。
ぼーっとしている彼女を起き、尾崎紅葉の視線はその下_太宰治に向いた。

「これ、太宰。寝るのなら自分の部屋で寝るんじゃ」

尾崎紅葉は太宰治に向けてそう言った。
だが彼は起きる気配は無く、逆に嫌そうに体を動かし彼女のお腹の方を向いた。

尾崎紅葉は思わず目を丸くした。

__呑気に眠るとは。

こんなに隙のある太宰治を見たのは初めてだった。
尾崎紅葉は軽く体を揺らしたが彼が起きることは無かった。

「ふむ…」
『……あ、尾崎様。すみません、眠ってしまいました』

ふと、彼女は冷静に考えてそう言った。
しかし、まだウトウトしているのか、瞬きが多かった。

「大丈夫じゃ。もう真夜中じゃ、眠るかえ？」
『…すみません、布団を1枚貸して貰えますか？』