絶対命令【文スト】 (ページ20)

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彼女は謝った。
そして椅子から降り、地面に頭を押し付けて土下座をした。
もう一度同じ言葉。

『ごめんなさい』
「顔を上げたまえ」

『……』

太宰治はすぐにそう言った。
すると彼女はゆっくり顔を上げては、気まずそうにしていた。

「このキズは敵対していたんだ。仕方ないだろう？」
『……はい』

「聞き分けのいい子は嫌いじゃないよ」

キズに対する謝罪は終わった。
彼女は太宰治を見ては耳が垂れ下がった。
_視界の中で必ず異様に目に入る耳はよく分かる。

「…では、謝罪として隣に来たまえ」
『！』

その言葉に彼女は素直に従った。
着物に引っかかり転けないように丁寧に歩き、太宰治の隣に座った。

すると太宰治は彼女の頭に触れた。
その瞬間、異能力の渦が巻きあがり、彼の異能力が発動した。

耳としっぽが消えた。

その真実を前に太宰治はつまらなそうに口を開けた。

「私も触れたかったなぁ」

『異能力なので。無効化のあなたにはダメだったんですね』
「うーん、残念だなぁ」

彼はそう言いつつ、彼女頭を撫で続けた。
ゴツゴツとした女性とは打って変わった手つき。
彼女は慣れない行動を受けて、氷のように固まった。

そして、そんな時間が数十分続いた。

『いつまで撫でるんですか』

痺れを切らした彼女はそう言った。
このマフィアの人たちはなでる人が多い。
尾崎紅葉も太宰治も行動にしてきて、中原中也も撫でそうな目付きをしていた。

(異様だ)

彼女には理解できなかった。
前までのご主人様は触れることも恐れ多かったのに、彼らは全く違う。
_盾ではなく、まるで玩具にされているかのようだ。

「お話は終わったからね。暇なのだよ。
私は異能力のことさえ聞ければ何でも良かったんだ」

『…撫でられるのはなれない行動です。もう今夜はおやめ下さい』

「……」

控えめに言う彼女に太宰治は目を丸くした。
そして頭上を見ようとしたが、異能力は消えているので、本心かどうかは分からない。

何となく、彼は手をパッと離した。

『……』

「はいはい、これで満足かい？」
『…はい』