【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ10)

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襖をノックして横にスライドさせると、チラリと視線が此方の方に向いた。
静かにその視線を受け止めて、用意してある私の場所に歩いて座った。
尾崎紅葉もエリスさんの隣に座り、何事も無かったように口を開けて喋り始めていた。

『…』

お姉様達も会話に戻ったのか、また1人ポツンと残された。
…今が最後の晩餐。

(なら、サッと料理でも食べちゃおう)

私は顔を上げた。
そしてお箸を使って口に入れた。
高級料理だらけ、量はそんなにないし、美味しい料理を食べれていい。

ﾊﾟｸｯ_

『…????』

(ん？)

味が濃い………

『まず』

「「「「「………」」」」」

(こんな味が濃いの食べるのか…もう要らないや…)

最後の晩餐は味が濃いのかぁ

(いつも食べてるほんのり甘い汚れたパンがいいなぁ…)

いや、食べれるだけ幸せなのだろうけれど。
この調味料は私にとって毒でしかない。
なんて思っていると、ポートマフィアの首領が1口料理を食べていた。

「首領！」
「うーん…別にまずくはないのだけれど」

ふと、そんな声が聞こえた。
目を丸くして森鴎外の目を見ると、こちらの様子を伺っている用で視線を逸らした。

(私のような者が目を合わせてしまった…)

焦りと共にふと、我に返った。

『……あの、聞こえてましたか…？』
「嗚呼、この料理等が気に入らなかったのかい？」

『いや、その…』

言葉に困っていると、ふとお姉様が隣にやって来た。
そして、小さく耳元で呟いて下さった。

「このコース、お父様が選んだの」
『……』

(え)

死んだ…私の死が確定…

そう思うと共にぎゅっ_と着物の布を強く掴んだ。
…機嫌取りをもう一度すればいい。

(流石に、人前で…殴らない…はず……)

ﾁﾗﾘ…と横目でお父様を見ると、すごい形相で私を見ていた。

『ｯｯｯ、ｯ……あはは』

私はにっこり作り笑いをして前を向いた。
お父様と、目が合わせられない…。
心の中で泣きながら、思ってもない言葉を続けた。

『ものすごく美味しいですよ。皆様もお気に入りなられると思います』