【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ9)

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「サイズはあいましたか？」

部屋の襖を開けると、店員さんがいた。
心配をして下さったようだ。
私は微笑んで普通にお話しした。

『はい！ぴったりでした！ありがとうございます！』
「お気にいただけて良かったです」

『今度、お礼と共にお返しいたしますね』

ふふふっ_と気楽に喋ると、後ろから「あ！」と驚く声が聞こえた。
そしてこちらに走ってくる音がして、振り返ると私の前で彼女は止まった。

「あの、体は大丈夫でしょうか？」

(あの時の新人さんだ…)

着物で走るのは大変だっただろうに、急いで駆け付けてくれた。
私は普通に笑って『ありがとう』と口を開けた。

「あの時はありがとうございました」
『んー、なんのことですか？』

「え、でも、あの方は私の身代わりと…」

新人の子はふと、気づいたのか口元を押えた。
…誰かが私の行動に気づいたのだろうか？

『あの方？』
「も、申し上げることはできません…」

『……へぇ…アンドリー家の娘の私でも？』

「っ…」

圧をかけたが、口を開いてくれそうになかった。
思わずため息をついて、肩を優しく叩いた。

『あなたが失敗しなくてよかった。これからも頑張ってね』
「！はい！」

私がその場から足を進めると、彼女は私の方に深く頭を下げた。
…感謝されることは始めてだ。

(ちょっと、照れくさいなぁ…えへへ)

数歩歩いて、私は立ち止まった。
思わず足が重くなった。

(でも、私はこれからどうなるか…)

少し考えるだけでも手の先が大きく震えた。
自然と仮面を触れて、手をギュッと強く握った。

『…』

すると、隣で誰かが通った。
顔を上げると尾崎紅葉が私の数歩先で、こちらを見ていた。

「何をしておる。戻るんじゃないのかえ？」
『…はい…』

「…」

(とりあえず、今しばらくだけは耐えよう…。)