【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ48)

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「そんなので飛ぶわけが無いでしょう？」

『それは分かりませんよ。
首領の気分を不愉快にしてしまったら、私は生き残れません』

(誘拐とメイドの首1枚で繋がっている身)

そんな薄っぺらい物は簡単に切られてしまう。
マフィアは基本的に利益が出せなければ消える。
全ての仕事において結局はそうなのだが、裏社会ではその重さが違う。

エリス様が普通に【殺したわ】と言うくらいに失敗は全てを終わらせてしまう。

「…それで早くあの部屋を去りたかったの？」

『はい。だから私の心が弱かったんです』

死ぬかと思ったから。
逃げ出して安全圏の中に居たかった。

＿＿いつの間にかこの部屋が安全だと思ってしまっているみたいだ。

(安全な場所なんてないのに。)

するとエリスは小さく呟いた。

「ワタシのせいじゃないの？」

『違います。エリス様。
私はこんな所で嘘はつきません』

目を見てそう言うと、彼女はホッと一息ついた。
本当に私のせいだと思っていたのか、大きくため息を吐き、優しい瞳で見つめ合った。

「さっきのはワタシの発言よ。
Aが気にする必要ないし、殺そうとするのならワタシも手札を切るわ」

エリス様は強くそう言った。
こんな幼いのに、手札があるなんて…恐ろしい。

＿私は苦笑いをしながらエリスの頭を撫でた。

(気休めでも嬉しいな)

流石に、こんな小さな子に守ってもらおうとは思わない。
逆に大きな私が命を投げ出して守るくらいじゃないと、メイドとしてここに立つ役がない。

『ありがとう、エリス様』
「うんっ！困ったら言うのよ！」

＿力になってあげないこと無いんだから！

エリス様は元気にそう言った。
思わず微笑むと、彼女も笑ってくれて、クスクス笑いあった。

ｺﾝｺﾝｺﾝ_

ふと、部屋のドアからノックオンが聞こえた。
目線を向けると共に「入るけれど良いかい？」と確認する声が聞こえた。

(森様だ…)

まさか、私の予想通り命を＿＿？

思わず手が震えると、ぎゅっと強く手を握られた。
顔を向けるとエリス様が得意げに笑っていた。

「Aは何もしなくていいのよ」
『エリス様…』

「リンタロウ、良いわよ」とエリスが声をかけると共に扉が開いた。。