【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ46)

今日:28 hit、昨日:3 hit、合計:92,532 hit

46 ページ46

彼女は完璧に上の空になっている中、エリスはAと繋いでいる手をぎゅーっと強く抱きしめた。

「エリスちゃん、それは＿＿「似合ってるでしょ？」

ワザと森鴎外の言葉に被せて、エリスは口を開けた。
すると彼の目が縦に開いた。
ヒドく動揺していて、返答のない彼の言葉にエリスは大きくため息をついた。

「無視するなんて、リンタロウなんか大っ嫌い！」
「あ、あ…すまない。似合っているよエリスちゃん」

「可愛いよ〜」と森鴎外が声を出すと、いつもは"キモイ"と声出すエリスは何も言わずに、不満そうにしていた。
そして「Aは？」と怒ったように聞いていた。

「…もちろん、Aくんもとても似合っているよ」
「ふふん、やるじゃないリンタロウ」

するとコロッ_と気分が良くなり、エリスはAに向けて「リンタロウもそう言ってるわ！」と楽しげにそう言った。

ふと、彼女は我に返り『ああ、ありがとうございます…』と疲れたように口を開けていた。
魂が抜けた気弱な声にエリスはバッ！と心配そうに目を向けた。

「どうしたの？疲れたのかしら？」
『はい、ちょっと、失ったものが多くて…』

「ワタシにはよく分からないけれど、戻る？」

『はい…。
とにかく皆さんに見せれて良かったですね』

Aは早口でそういい、すぐにエリスと共に部屋の中へ戻って行った。
出る時は一礼し、姿が見えなくなるとドサッ、と言う音が聞こえた。

それと共に、エリスが心配して駆け寄っていた。

「A！？」
『早く閉めてください…もう、二度と出れませんっ』

ふと、そんな声が空いた扉から聞こえた。
気弱な声に、疲労の声も混じっていたが、テンションがあがったエリスには理解できなかった。

「なんでそんなに落ち込むのよ！」
『落ち込んでませんっ！』

「ワ、ワタシなにか気に触ることをしたかしら？」

『していませんよ。
とにかく、閉めてください』

そんな声を後に、扉が閉まった。
部屋に残された3人は、しばらくの間1mmも動けなかった。。