【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ40)

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(私も殺すってこと？)

自然と涙が溢れた。
熱い目元を冷やすかのような涙が頬を伝って零れた

＿怖い。
可愛い女の子の筈なのにそのオーラと発言が全く可愛くない。

思わず力が抜けて座り込んだ。

「嗚呼、力が抜けたのね。大丈夫よ」

そう言って彼女は愛おしく抱きしめて来た。
ぽんぽん＿と彼女は私の頭を撫でてくれて、まるで私は飼われている犬のようだった。

手が震え、心の底から逃げ出したいと思った。

＿嗚呼、私…やばい所に誘拐されたんだ。

『はぁっ…は…っ……っ…はぁっ』

思わず呼吸が乱れた。
こんなこと、冷静に居られるはずがない！

「あら、どうして泣いてるの？
………もしかして怖くなっちゃったの？」

そう、心を読まれた気がした。
思わず目線をあげて、彼女を見ると目が合った。
＿それが狂った瞳というものはすぐ分かった。
でもそれと共にどこか悲しそうな目をしていた。

(…なんでそんな目を…)

「Aは殺さないわ」
『！』

「だから愛して…」と彼女は抱きしめてきて、耳元でそう呟いていた。
＿先程までは恐怖しか湧かなかった。
でも、気弱な声が聞こえて我に返った。

(もしかして)

＿＿エリスは本当に愛されたりないのかも。

予想だけだった。
それにポートマフィアの首領から溺愛されていると噂されていたから、ありえないと思っていた。

でも、実際は愛に飢えている。

(過去の私も同じだった)

〖お母様っ！お母様ぁっ…どうしてっ…〗

何度も何度も叫んだのに一度も反応して貰えない。
その辛さは、言葉では言い表せないほど。

ただ1人で涙を流すだけ。

少しして、お姉様が気づいて寄り添ってくれた。
でもそれじゃなんの慰めにもならなかった。
お母様に、あの時は心配されなければ何もならない。

(エリス様…)

将来私のようになるのだろうか？

愛し方も分からず、愛されることも諦めた私のように。