【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ38)

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ｺﾝｺﾝｺﾝ

私は大きくそびえ立った扉の真ん中を叩いた。
そこで一呼吸し、心を整えた。

意外と緊張している。
ミスは出来ないから、ずっと気を張るから。

返事を待っていると「入りたまえ」と声が聞こえた。
扉を開け、隣にいる太宰様と共に中に入った。

『失礼します、首領』
「連れてきたよ」

私が深く頭を下げると、隣でケロッと太宰様はそう言った。
すぐに頭をあげると森様は優しい笑顔を浮かべていた。

「ここまでご苦労だったね。太宰君。
さて、A君はあちらの部屋だ」

森様はそう言って、部屋の奥の扉に指を指した。
目線を向けると、それはそれは大事そうに閉じ込めている部屋があった。

(エリス様はあそこに…)

「エリスちゃんを頼んだよ」
『はい！』

私はその場で一礼して、扉の方へ歩いた。
扉に手をつけて、それを開けると中から何がが飛び出してきた。

それを受け止めようと体がぐらつき、ドサッと音を立てては私は後ろに倒れた。

(うっ…)

上手く受け身を取れず、背中が痛い。
そう思いつつ目を開けると、私のお腹の上に馬乗り状態でエリスは笑っていた。

「A！遅かったじゃない！」
『す、すみません…』

すぐにそう言うと彼女は「仕方ないわね」と許してくれた。
そしてぎゅーっと抱きしめてきた。
私も抱きしめかえし、体を起こして立ち上がった。

(軽いなぁ)

エリスの体重がとても軽い。
それと、小さな体の体温がものすごく暖かった。

自然と綺麗なエリスの髪を撫でて、部屋の中に持って行った。

＿＿
＿

「今日からメイドとしてワタシのそばに居るのよ！」

「絶対にね！」とエリスはベットの端に座ってそう言ってくれた。
私はその言葉に『はい』と微笑んだ。

『拒絶されるまで離れませんよ』

(流れで私を救ってくれたんだ)

飽きられるのも何となく目に見えている。
だが、私ができる全てのことはしてあげたい。

するとエリスは不気味に笑った。

「ふふっ、そうよ！
離れたら…どうなるか分かってるわよね」

彼女はどこか異質な瞳で私を見た。
目が合うとゾクッと背筋が凍ったのはきっと気のせいだ。。