【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ36)

今日:19 hit、昨日:68 hit、合計:92,591 hit

36 ページ36

「真っ赤じゃないか」
『い、言わないで下さい…』

私はすぐにそう言って睨みつけた。
目が合ってしまうと直ぐに目線を外し直視出来なかった。

(なんで、私だけ、こんな思いをっ…)

そもそも男性と話すのが初めてだった。
お父様以外の男性とは話したことはなく、本や小説を読んで男性について学を得ただけ。
……なのに、こんな男、聞いたことがないっ。

「ほら、私、まだお腹すいているんだけど」
『は、はい…』

私は次のお寿司をとって、彼に差し出した。
目線が上手く合わせられず、ほとんど動けない。

(嗚呼、早く終わって…)

心からそう願うばかり。

＿＿＿＿
＿＿
＿

「ご馳走様」
『ご馳走様でした』

私は手を合わせてそう言った。
そして立ち上がり、すぐに食べ終えたお皿などを流しに持って行った。

自然と私は率先して洗い物をいつも通りした。
＿割り箸は捨てて、お寿司のお皿と小皿2枚を洗う。

(せっかくの高級寿司が…)

あんまり食べられなかった。
それに味も緊張しすぎて感じられなかった。

その事にショックを受けながらも、手は続けた。

スポンジを泡立てて、傷をつけないように洗う。

また洗い残しが無いように1つ洗えば綺麗に流す。
そしてまた新しい小皿へと手をつける。

『…』

すぐに洗い終わり、彼の方に視線を向けると「私の家、洗浄機あるけど」と言われた。
＿存在は知っているが使ったことも見たことも無い。

『本当ですか？』
「そこだよ」

指を刺されたところを開けると、そこには食器が立てかけられてそうな所があった。
たくさん置けそうで、近くにはボタンもあった。

(おお、すごい！)

なんて思いつつゆっくり扉を閉めた。
私は機械音痴で、慣れないものには触れたくない。

『…機会があれば使いたいですね』

(冬の夜とか良さそう)

手が痛みやすい時期に使うのはいいかもしれない。
そんなことを思いつつ、視線を彼に向けた。
すると彼は椅子から立ち上がり、ドアの方へ歩いた。。

「ついておいで」
『はい』