【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ33)

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『…』
「…」

(気まずい…)

こんな静かな中で食べていいの？
口の中で食材を噛む音が気になってきた。

(口を開けて食べてないからむちゃむちゃは言わないけど…)

「……」
『…』

(音も彼の目線が気になるｯ)

じーっと1mmも動かない視線が刺さりまくって気になる。
できるだけ見ないように前を見ていたが、気になって仕方ない。

『あの…私、何かしました？』

私は思わずそう聞いた。
すると彼は「なぜだい？」と聞いてきた。

ええええ？

『いや、私のことを見てくるので…』
「見てはダメなのかい？」

『そういう訳では……。
あ、朝ごはん、太宰様は食べましたか？』

話を逸らすと彼は首を横にふった。
キョトンとすると「食べてないよ」と口を開けてきた。

『これいりますか？』
「嗚呼」

私はお箸を持ってお寿司をつかみ、彼に渡そうとした。
でも、ハッ！として辞めた。

(これって関節キスになる…)

それは彼に失礼だと思った。
昨日の時点は手で回しているし、彼は指をくわえたけれど、くわえなくても食べれた。
でもお箸は違う。
お箸を置くと彼はつまらなそうにして、私を見てきた。

『新たなお箸を用意します』
「もうないよ」

『え…』

「あるのはその箸1本だけ。さて、どうする？」

彼は挑発的な目でそう言ってきた。
観察するような瞳に、思わず動揺した。

(この1善だけのお箸しかなかったの…？)

なら、太宰様が食べるお箸を使ってしまったと言うことだ。
なんてことをしてしまったのだろう。

私は頭をテーブルにぶつけながら下げた。

『も、申し訳ございませんでしたっ』
「……なんの真似？」

彼の声はその場を凍らせた。
思わずヒュッと喉元に刃物でも突きつけられたような恐怖を覚えた。

(こわい…)

怒らせてしまった。
こ、ここは、しっかり言葉を選んで謝らなければっ

『太宰様のお箸だと思いませんでした。
お許し下さい…腹も切ります…』

「……」