【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ31)

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『ん…？』

ふと、意識が戻りゆっくり体を起こした。
首元が腫れたように痛く、思わず手で押えながら体を起こした。

(フワフワなベット…？)

見慣れない天井。
見慣れない柔らかいベット。
見慣れない個室。
…すぐに気絶する前の記憶を思い出せた。

『誘拐、されちゃったんだ…』

服は例の店の着物であった。
夢じゃない。
これは、夢じゃない！

(ここはポートマフィア？)

思わずキョロキョロと部屋中を見回った。
部屋内にはベットの他に医療品もあり、奥にはクローゼットがあった。
医療品の棚には主に包帯ばかりだった。

『……』

(シンプルな部屋)

ｺﾝｺﾝ_

ふと、扉から音が聞こえた。
目線を向けると扉が開き、やってきた人と目が合った。

「あ、起きたんだ」
『太宰様…』

太宰治は私の方にやってきた。
手にはメイド服を持ち、ダルそうにベットの上に置いた。

「それが君の服だ。
ここはポートマフィアで私の部屋。何か質問は？」

『え…』

淡々と言う彼の言葉に理解するのに一苦労だった。
彼はじーっと私を見つめて理解するのを待ってくれるようだった。
…心が落ち着くと口を開けた。

『ありがとうございます。今のところ質問は大丈夫です』
「……」

その言葉が聞けたら、彼は直ぐに去って行った。
どうでもいいのだろう。
…私は残されたメイド服を手に取った。

『きれい…』

新品なのだろうか。
傷一つなく、黒い布と白いリボンがモノクロで素敵だった。

(こんな服着させていただけるんだ)

感謝しながらメイド服に腕を通した。
案外大変で時間がかかったけれど、着た感想はとても悪くなかった。

(この部屋に鏡はないか…)

着ていた着物は綺麗に畳んでベットの上に置いた。
掛け布団は綺麗に直し、枕も整えた。
そして地面に正座して座った。

『……』

(することが終わった。なにしよう？？)