【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ30)

今日:18 hit、昨日:3 hit、合計:92,522 hit

30 ページ30

手を取られた瞬間に、私は気絶させられた。
ぼやり…と視界がすぐに鈍くなり、そのまま森鴎外にもたれかかった。

「手荒くしないでって言ったでしょ！ダザイ！」
「…はぁ……」

手刀をしたのはそばに居た太宰だった。
エリスは心配そうにAに近寄っては、ホッ_と胸を撫で下ろしていた。

「さて、アンドリーマフィアとは解散しようか」

「全く長かったぞ。精神的に疲れてもうたわ」
「すまないね。紅葉くん」

森鴎外はそう言って、指をパチッ_とならした。
すると襖の奥から2人の黒服が現れた。

「この子をバレないように車へ」
「「はっ！」」

丁寧にAを受け取り、サッと部屋から去って行った。
その場にいる人の目線はすぐにエリスに向いた。
エリスはすぐに森鴎外のそばに行き、手を繋いだ。

「エリスちゃん、あの子にした理由はなんだい？
可哀想だと思ったのかい？」

森鴎外はそう言った。
…もう会えなくなる＝死んでしまう。
それは猫を被っていたエリスは知っていたこと。
でも、エリスが猫を被ったのは初めてで森鴎外は不思議でたまらなかった。

「そんなこと思わないわ。
Aはとっても優しいし、愛があるの」

「うーん、今まであってきたヤツらと変わり無かったぞ？」

「ううん、とても違うわ。なんて言えばいいのかしら…
あ！
ダザイなら分かるんじゃないの？」

ふと、思い出したようにエリスの視線は太宰治に向いた。

__貴方も味わったじゃない。

すると太宰はピクッと動きが止まった。
でも「知らないね」と口を開けた。

「もう、ケチね！Aは貸さないわよ！」
「そんなこと、私から願い下げだね」

2人はお互い睨んではふぃ_と顔を背けた。
_お互い思うことはあったんだろう。
じゃなきゃ、太宰が口を開けることは無い。

3人はすぐにそう察した。

「うふふ、2人だけの秘密かい？私も混ぜておくれよ」
「秘密も何も無いわよ！」
「はぁ…」

「楽しくなりそうじゃのぉ」
「…」