【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ25)

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「婚約者になればいいじゃない！ダザイ！」
「えぇ…ヤダよ。めんどくさい」

すぐに否定されたけれど、そっちの方がいい。
…はなから期待なんかしてないから。

でも、エリス様は不満なのか私の腕を引っ張っては「お気に入りなの」と口を開けてきた。
_絶対離したくないのか、ぎゅっっと抱きついてきた。

(た、助けて…)

そう思いながらお二人の方を見ると、なにか2人で会話していた。
目が合うとニッコリされ、森鴎外が私の前にやってきた。
そして、1つ、手を差し出された。

「私に、誘拐されないかい？」

『え…？』

ﾋﾟｼｯ…と体が固まった。
ユウカイ？誘拐？_ん？

(それって、本人の許可を貰うものだっけ？)

目をパチクリとしていると、隣でエリスは「いいじゃない！」と楽しげな声をあげた。

「誘拐されて、ワタシ専用のメイドになって？」
『え、えっ…と？これって私に拒否権ありますか？』

「「ないね／わ」」

『はは…』

(でも、これで私は死なずに済むのかな？)

楽になれるのかな。
苦しくて1人寂しい思いせずに済むのかな。
お父様を裏切ることになるのかな。
たくさん愛嬌をふってくれたエリス様に少しでも恩をお返し出来るのかな。

たくさんの感情が混ざった意見が溢れ出た。

__でも、あの場所から変わりたい。

その気持ちが芽生えてきた。

ﾌｯ…と微かに生きる希望が見えた気がした。
そのまま、流れるようにゆっくり森鴎外の手を取った。

『…誘拐してくれますか？』
「勿論だよ」

ふわり…と空気が優しくなり、エリスはニパッと明るく笑った。
太宰治はため息をついていたが、口角が少し上がっていた。
森鴎外は大歓迎とでも言うような顔をしていて、わたしも思わず笑顔になれた。

「やったわ！Aは私のメイドね！」
『はい、エリス様の言う通りに』

『ふふっ』と笑みがこぼれるとエリス様は楽しそうに私を見てくれた。

(あの場所から逃げれるのなら、エリス様の為に動けるのなら、喜んで身を捧げます)