【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ21)

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『ありがとうございました』

私はちゃんと完食できたことに礼を言った。
3人は何も気にしてないようだったが、私としては最後の晩餐として素敵なご飯を食べれたのだ。
こんな素敵なことに感謝しないことはない。

「…では、すこし聞いてもいいかい？」
『はい。仰せのままに』

腕の中に抱きついてくるエリスの頭を撫でながら、そう答えた。
森鴎外はチラリと太宰治を見てから私を見た。

「ここに来た理由は知っているかい？」

『…お見合いですよね。把握してます』

「君は、正直言えば何もしてない。
太宰くんと中原くんの2人共、気に入らなかったのかい？」

森鴎外はそう聞いてきた。
少し内部を踏む話。
そう理解して、聞いてきているのだろう。

『いえ、気に入る気に入らない以前に、私には勿体ない方だと思いました』
「どうしてそう思ったのだい？」

『私はあなたが思っているより、下の立場に居ます。
同じ立場には立っていません。』

＿上の立場の方達には、敬わなければならない。
＿＿逆らっては行けない。

『私はそういう人間です』

呪文のようにそう言った。
自分に言い聞かすように強くそう言った。
その場にいる3人は静かに私の方を見た。

「…その上下関係は誰が決めたのかい？」
『誰も決めていません身を守るために自分で考えましたから』

「……なるほど」

森鴎外は少し考えてから、簡単に引き下がった。
そして優しく笑っては「すまないね」と謝ってきた。

『いえ、どこでどうしてそんなことを？』
「うーん、それは＿＿」

ふと、森鴎外が言いかけた時、ｺﾝｺﾝ_とノックする音が聞こえた。
目線を向けると「森様はいらっしゃいますか？」と扉越しに声をかけてきた。

ﾋﾟｸｯ…

私はその声を聞いて自然と落胆した。

(お父様…)

自然とギュッと手を強く握った。
手の震えがバレないように、力を手に込めて気を紛らわせた。