ムラサキ__《N.Ren》 (ページ32)

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your side

帰りも1人だった。
家に帰ると、両親が出迎えてくれた。

「え、何どうしたの…2人揃って」

私が聞くと、父が言った。

「こっちに座りなさい」

その重々しい言い方に、空気が固まった気がした。

言われた通り、リビングの椅子に座る。

「A、……勇太くんについていきなさい」

「え……？ついていくって、今も付き合ってるけど…」

父の言葉に、違和感があった。

父は続けた。

「そうじゃないんだ、……向こうの会社が、海外進出するらしくてな」

海外？

「次期社長の勇太くんは、そちらで経験を積まれる予定なんだそうで」

経験？

「それで、本人からの希望で、少し早めに現地に行って勉強をしたいんだと」

現地？勉強？

「だから、妻になるお前も、ついて行って傍で支えてあげなさい」

ついていく？私が？海外に？

「まあ突然の事で驚くだろうが、悪い話じゃないだろう。あちらも、お前にぜひ一緒に来て欲しいと言ってくださってる」

悪い話じゃない？

「急で申し訳ないと言われたよ。まあ、1週間あれば引っ越す用意は出来るだろう」

1週間？

ダメだ、父の言葉が全く頭に入ってこない。

海外にいく？勇太と？1週間後に？

「え、じゃあ学校は…？」

絞るように出てきた言葉。

「転校することになるよ、英語は苦手じゃなかったよな？」

当たり前のように告げられた、転校。
それも、海外、とんでもない距離。

私は1週間後に、ここを出ていく？

その時真っ先に浮かんだのは

永瀬くんの顔だった。

もう、会えない？

「ちょっと、A！！どこに行くんだ！」

背中から聞こえてくる両親の声。
気づくと私は、家を飛び出していた。