ムラサキ__《N.Ren》 (ページ33)

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ムラサキ__33 ページ33

廉side

放課後、紫耀と屋上に来た。

1人で居ると色々と思い悩んでしまいそうで、
紫耀がそれを分かってか、一緒に居てくれて有難かった。

「……てか廉はさぁ、綾瀬川さんのどこを好きになったん？」

紫耀が俺に聞いてきた。

「どこって……」

俺は思い返した。
Aを好きだと思った時のことを。

「……馬鹿みたいに、お人好しなとこ」

自分の方が苦しいはずなのに、
何故か他人のことを優先させるし

絶対他人が傷つくことをしないし、

「…だけど、俺の前ではちょっと甘えてくるところ」

永瀬くんなら、って
俺を特別扱いしてくれて。

やっぱり、ずるい。
ずるいんだよ。

特別扱いしておきながら、
Aは結局、神宮寺を選んで遠くへ行ってしまうんだから。

「……、全部、全部好きや」

俺は、泣いていた。

「…そっかそっか、廉がそんなに好きになる相手やもんなあ、素敵な人やなあ綾瀬川さん」

紫耀は俺の横にずっと居てくれて、優しく声をかけてくれていた。

「廉は、綾瀬川さんに気持ちを伝えへんの？」

紫耀にそう言われて
俺は戸惑った。

「……俺が気持ちを伝えて、あいつを困らせないかが怖い。お人好しだから、迷惑をかけて作り笑いをさせるのが怖い、」

Aの意志の固さは俺が1番分かっていた。
伝えたところで、困らせるだけだ。

「廉はそれでええん？」

紫耀が言った。

「お人好しな綾瀬川さんが、廉には素直になってくれてたんやろ？なら、廉も綾瀬川さんに素直になってもええんやない？」

永瀬くんの前では素直になれる、
そう笑って言ってくれていたAが浮かんだ。

俺は、Aに素直に言葉を伝えていただろうか。

「…紫耀、俺、」

まだ、何も伝えられてない。
伝えたい、伝えなきゃ。

「ん、気持ち決まったみたいやね！よかった！」

紫耀がこっちを見て笑った。

「…ほんまに、ほんまにありがとう」

気づけば日が沈み始めていた。
俺と紫耀は屋上から降りて、学校から歩いて帰っていた。

そのとき、俺のスマホが鳴った。