ムラサキ__《N.Ren》 (ページ25)

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ムラサキ__25 ページ25

……………あれ、

俺は目をあけて、慌てて起き上がった。
少し日が落ちてきた空を見て気付く。

「やっべ、寝ちゃってた……」

屋上の風があまりに気持ちよかったのか、
昼休みからそのまま寝てしまっていた。

また授業をサボってしまった。
紫耀、怒るかな。

「…しゃーない、とりあえず帰るか」

屋上を降りて、教室へ向かう。
帰宅したり部活へ行ったりで、
教室のある棟に人はほとんど居なかった。

廊下を歩いていた時だった。

「………ん？」

教室に人影が見えた。

「……A？」

Aが、教室の机で腕を組んで、
そこに頭を乗せて寝ていた。

いつもの貼り付いた笑顔ではなく、
無防備な寝顔を晒している。

俺は自然と、Aの方へ近寄っていた。

教室に入り、Aの席の横に座った。

放課後の教室で1人、穏やかな顔をして寝ているA。
久しぶりにAが自分の目の前にいて、
俺は嬉しかった。

本当はAを起こして喋りたかったが、
こんなに気持ちよさそうに寝ているところ、
さすがにそれは出来なかった。

それに、
ただ目の前にいてくれるだけで、満足だったから。

もし起きたら、なんて声をかけようか

1人で教室残っててどうしたん？

帰らへんの？

最近元気？

俺は今日屋上の風が気持ちよすぎて寝ちゃってて、

色んな言葉が浮かんだ。

だけど、

俺が1番に思い浮かんだのは

「……A、」

________大好き。

言葉になる前に、
その思いは俺を突き動かしていた。

夕暮れの教室で2人きり、

俺は、寝ているAにキスをした。