ムラサキ__《N.Ren》 (ページ23)

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ムラサキ__23 ページ23

神宮寺side

Aと出会って、俺は初めて人を大切にしたいという気持ちを持った。

正式に結婚するまで、恋人という関係がスタートした。
俺はとにかく、Aを愛した。
好きで好きで、誰にも渡したくなかった。
不器用だけど、出来る限りの愛を伝えていた。

だんだん、その気持ちは度が過ぎるようになっていて、
Aが他の男と話すのを見るだけで許せなくなった。

「おい、ほかの男喋んなよ」

「ほかの奴の前で笑うなよ」

俺はAを束縛していった。
それでも、Aは

「……うん、わかった！」

そう言って、俺に向けて笑顔を見せてくれていた。
その顔は、どこか母親に似ていて。

あ、俺、また大切なものを壊すのかもしれない。
そんな未来が頭をよぎった。

…だったら、向こうから壊れてしまうくらいなら

自分の手で壊しておいた方が
傷つかなくて済むんじゃないか？

そうして俺はまた、
以前のように、色んな女と居るようになっていた。

そんなことをしても何も満たされないと分かっていても、

Aを愛して壊すくらいなら、
壊そうとして壊れてくれた方が、よっぽど気が楽だから。

そう、ずっと思っていた。

だけど、俺はもう逃げない。
スマホを開き、全ての女の連絡先を消した。

そして、Aの連絡先を押し、電話をかけた。

「あ、もしもしA？」

俺は、Aを

「今すぐ男の連絡先消してくれない？」

永瀬廉ともう会わせたくない。