ムラサキ__《N.Ren》 (ページ14)

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ムラサキ__14 ページ14

your side

今日は本当に色んなことがあった。

結局、あの後屋上から降りて
そのまま家に帰ってきてしまった。
あんな騒動を起こしたあとに、
教室に戻れる気にはなれなかった。

勇太からは、あれからまだ連絡がない。

どうしてこんな風になってしまったんだろう。
確かにクールな性格だったけど、以前はもっと私のことを大切にしてくれていた。親同士が決めた結婚相手だったけれど、本気で彼のことを好きになっていた。

……変わってしまった。

突然女に掴みかかられた時の恐怖、女を追いかけて走っていった勇太の背中。
そして、私の元へ走ってきてくれた永瀬くんの姿が頭に浮かんだ。

この辛いこと続きの中でも何とか頑張れているのは、
何故か私のことをいつも助けてくれる、永瀬くんのおかげだと思う。

「もし永瀬くんみたいな人が結婚相手だったら、もっと幸せだったのかな……」

…何考えてるんだろう。永瀬くんは可哀想な私に同情してくれているだけで、別にそんなんじゃないのに。

モヤモヤとしていたその時、

ﾌﾞﾌﾞﾌﾞ、ﾌﾞﾌﾞﾌﾞ

スマホが鳴った。電話だ。

「……もしもし？」

「あ、もしもしA?俺だけど」

…勇太だった。

「なんか今日はごめんな〜〜。とにかく、あの女は全然関係ないから、な？」

顔が見えなくても分かる、ヘラヘラとした態度。
分かりやすい嘘。

「え、でも…私、首掴まれたんだよ…？」

関係ないって、何を言ってるんだろう。
さすがに言い返してしまった。

「だからないって言ってんだろ。…お前、そんな面倒くさいこと言うタイプだったっけ？」

私の態度が気に入らなかったのか、少しキレている勇太。
そんな勇太の声を聞いた私は、
一呼吸置いて、口角をあげて答えた。

「ううん、……無いんだね、わかった！ごめんね！」

精一杯の、明るい声色。

ああ、やっぱり素直な私は必要とされてない。