よん ページ4
次の日。さっそく来てくれた先輩には、忘れぬ内にと直ぐに名前を伝えておいた。
「そういや名前知らなかったな。よろしく、A」
流れるように下の名前を呼び捨てである。流石……と内心苦笑いをしながら、よろしくお願いしますと返す。
それからというもの。1週間に2、3回のペースで先輩は公園に顔を出した。
勉強を教えてくださいとはいったもののやることはまちまちで、雑談したり、更には何故か狭い公園内で鬼ごっこをしたときもあった。体力がまさに鬼の様で到底かないっこなかったが。
そして、間近に迫るは冬休みだ。12月にもなるとコートを羽織っていないと辛い。
家族や友人と一緒に過ごすであろうイベントが凝縮されている長期休み。学生にとって楽しみなものだろう。
それも一般的な話。できるだけ家に居たくない私にとっては地獄の期間でしかない。嫌な事を頭から振り払う様に、話題を引っ張り出した。
「先輩、親が厳しいって言ってましたけど、こんな夜遅くに家抜け出して怒られてないんですか?」
「あんまいい顔はされねえけど、派手に怒鳴られたりはしてねえよ。きっとストレス発散に俺を怒鳴りたいだけだろうし、テストんときは特にイライラしてたんだろ」
大丈夫だ、と先輩は笑う。その目はどこか遠くを見ているようで、その視線の先に何を見ているのか私は知り得ない。
そうだ、久しぶりに。と思い付きで先輩に声を掛ける。冬は空気が澄んでいるから、きっと綺麗に見える。
「宇髄先輩、自転車持ってますか?」
突然の問に先輩はきょとんとした顔で答えた。
「持ってはいるけど、どうした?」
「ちょっとワルになりません?優等生先輩」
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作者名:ぽてと | 作成日時:2019年12月7日 17時