先輩と私のお話【鬼滅の刃】 (ページ11)

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じゅういちページ11

「今一緒に住んでいる母は、生みの親じゃありません。私が小学三年生の時に父と再婚した、いわゆる義母ってやつです。」

ゆっくり、言葉を選びながら話し始める。視線は宙を彷徨う。誰にも話したことのない自分の事情を話すのは、少なからず抵抗があった。

「だからでしょうね。最初は優しかったものの、すぐに私に当たり散らかすようになりました」

すぐ近くに、触れられる位置にいるのに、先輩を視界に入れられない。どんな反応をされるのか、怯えてしまっていた。それでも話し続けられるのは、話し続けてしまうのは、先輩が宇髄天元という人だからで。

「離婚は実の母の浮気が原因なんですけど、バレた後、もう貴方とはやっていけないから、とかなんとか言って私を父に押し付けて逃げました。気が弱い父はそのまま言いなりに」

「義母が私に当たっていることも、気付いてはいるはずです。ただ、さっきも言ったよつに気が弱いからか何も言ってはくれず、何事も無いように過ごしています」

先輩は何も言わず、静かに隣で座っている。どんな表情をしているのか、見当もつかない。

「今日は部屋の鍵をかけ忘れてたんです。いつもはかけてるんですけど、ほんとにたまたま。で、それに加えてドアが少し空いてたらしく。隙間から私が見えたみたいで、イライラしていた義母が部屋に乗り込んで殴ったりカッターで切り付けたり...」

「理不尽極まりないですよね」

ふと、唐突に名前を呼ばれる

「A」

はい、と言いながら、反射的に先輩の顔を見てしまった。

先輩は酷く傷ついた表情で私を見つめている。同情ではない、何かが見て取れた。

おもむろに私の頭をそっと撫でる。例えるなら、そう。壊れ物でも触るみたいに。そして頭を、私の肩にとん、と乗せた。先輩の綺麗な髪の毛が頬にさらさらと触れた。

「...笑いながらなんて、泣かないでくれ」

か細い声がすぐ耳元から聞こえた。