蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ46)

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独裁的。ページ46

パチンと両手を合わせて、謝るポーズを取った。

『正面から堂々とスポットに近づいて、屁理屈捏ねて中に入ろうとするなんて…そんな非常識的な行動は、私達Dクラスくらいにしか出来ないじゃない？だから、Aクラスの皆にもサプライズをお届けしたくて。けれど、それで無意味な争いを生むのは間違ってるね。私もまだまだだなぁ、葛城君みたいに冷静に物事を考えられないの。』

ごめんなさい！と上目遣いで様子を見やると、隣の弥彦君は分かりやすく頬を染めていた。
ちょろいなぁ…大丈夫か…？
葛城君には流石に効かないようだったけれど、それでも愉快な同級生だと認識はしたらしい。
意味が分からないというように笑みを浮かべながら、私に名前を問うた。
フルネームを教えて、その場を後にする。
それ以上は、教えてあげないからね。

最後に向かったのは、Cクラスが所有するスポットだ。
ただそこは、今までの雰囲気とは一線を画すものだった。
一言で言うならば、バカンス。
つまり、楽しんでいた。
砂浜で寝転がってお喋りをする女子生徒、ふざけて海にクラスメイトをぶち込む男子生徒、ビーチバレーを楽しむ集団に、バーベキューの香ばしい匂いまで漂ってくる。
鈴音さんは、驚きのあまり口を手で覆っている。
清隆も表情こそ変わらないものの、中々衝撃だったらしい。
かくいう私も、思い切ったことをしているCクラス…主に龍園君の思考回路に、益々興味が湧いた。
直射日光を浴びながら絶句していると、1人の生徒が龍園君のお使いとして現れた。
曰く、私達を呼んでいるらしい。
案内された場所へ向かうと、龍園君はパラソルの下に広げられたビーチチェアにどっかりと腰を下ろし、くつろいでいるところだった。
龍園君は、私達を見ても大して驚いた様子も無かった。

『随分と、羽振りが良いんだね。』
「見ての通りだ。俺達は、夏のバカンスってやつを楽しんでるのさ。」
「トップが無能だと、下の人間が可哀想ね。」

鈴音さんがそう貶す中、我関せずの龍園君は飲んでいた炭酸水を呼んだ石崎君にかけて、新しいものをねだった。
何とまぁ、独裁的なんだろうか。
心なしか痛む頭を押さえていると、龍園君がこちらを振り向いた。

「100だが200だかのクラスポイントのために、お前らは飢えに耐え、暑さと虚しさに耐えるのか。想像するだけで、笑えてくるな。」
「警戒してここに来た、私が馬鹿だったわ。」
「…馬鹿はどっちだ。俺か？お前か？」