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第1話。 ページ3

桜の花弁が風に舞う、麗らかな朝。
微振動するバスに揺られながら、隣に座る清隆の肩に頭を預けてうつらうつらしていると、不意にバスの中で少女の声が響いた。

「ねぇ…席、譲ってもらえないかな?そこ優先座席だし、おばあさんに座ってもらった方が良いと思うの。」

どうやら、優先席に堂々と腰を下ろしている金髪の男に声をかけているらしい。
座席に鞄を置いていることからも、「遠慮」という言葉はあの青年の心の辞書には無いようだ。
足を組むとは、あの男ってば相当自由気ままね。
私は自分には関係の無いことだと判断し、再び目を閉じた。
窓から入ってくる日差しも清隆が握ってくれる手もあたたかいから、すぐに眠たくなってしまう。

「おやおや、プリティーガール!優先席は優先席であって、法的な義務は存在しない。」

どうやら、『若者だから席を譲れ』というのは馬鹿馬鹿しいと考えているようだ。
自分が若かろうと立てば体力を消耗してしまうとか何とかグチグチ言っているが、要は立ちたくないための理由付け。
無駄に口が立つ分、声をかけた女子生徒は戸惑いながら「社会貢献にもなるし」と付け加えている。
その男に「社会貢献」などという化石的言葉は通じやしないだろうに、よくやるわね。
暫くすると、女子生徒は周囲の人間に席を譲ってはもらえないかと声を上げた。
私は清隆が動こうとしないのならそのままだけれど、どうするのだろうか。

「…」

あれ、通路を挟んだ反対側の席の女の子を見てる。
長くて艷やかな黒髪を背中に垂らして、文庫本を読んでいるその綺麗な女の子はバスの中の騒動など気にも留めず、ただ黙々と本を読んでいた。
私も清隆も心底どうでも良いとは思っているけれど、ここまで無関心を貫けるってのは凄い…ある種の信念のようなものさえ感じる。

バスを降り、清隆と2人で眼の前にそびえ立つ学校を見上げた。

『今日からここに通うんだね、清隆。』
「あぁ。」
『何か起こるかなぁ。』
「何も起こらないことを祈るばかりだ。平穏無事に、波風立てずに過ごしたい。」
『ふふっ、違いないわ。』

清隆の指先にチョンと触れ、手を繋ごうとした時。

「ちょっと。」

凛とした声が降ってきた。
先程バスの中で、我関せずと読書していた女の子である。

「バスの中で私の方を見てたけど、何なの?」
「あぁ…悪い。アンタも俺達と同じで、席を譲る気無さそうだったから。」

私達より酷い。→←プロフィール(裏)。



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れい(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください (2月18日 12時) (レス) @page24 id: 774cbd6690 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年2月6日 18時

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