即退学。 ページ19
ガタンと音を立てて、平田君が立ち上がった。
ポイント増減の仕組みを問われた先生は、冷ややかに「実社会と同じで、詳細は機密事項だ」と告げる。
あぁ、やはり想像通りだった。
ポイントを得る機会は勿論あるし、結果如何によってはクラス昇格もあり得る。
直近で言えば、今度行われる中間試験。
そこで良い点数を取れば、少ない数だがポイントが支給されるらしい。
少ないとぼやく奴が居るが、そいつは今の現状を本当に理解しているのだろうか。
あるだけマシだと返す生徒も生徒だが、もっと危機感を持って欲しい。
先生が、この前行われた小テストの結果を張り出す。
揃いも揃ってクズのような点数ばかりだ、皆本当に勉強したんだろうか。
『…』
…愚問かな。
クラスの血の気の失せた表情を見渡し、即否定する。
やっているわけ無いだろう、こんな状況で。
先生は言う、次回以降の試験で赤点になった生徒は即退学になる…と。
「現在の情報で考えるなら…クラスポイントを少しでも手に入れるためには各人の生活態度を改め、次回の中間テストで高得点を取るしか無い。」
「そうね。」
『もっと言えば、入学当時に皆が夢見ていたであろう噂に名高い屈指の進学率や就職率の恩恵を受けるには、Cクラス以上に昇格する他無い。』
「えぇ。Dクラスに居る限り、進路の希望は叶わない。」
きっぱりと言い切る鈴音さん。
…今のちょっと茶柱先生に似てた。
こちらをチラリと一瞥した鈴音さんは、何かに気付いたように少しだけ目を見開いた。
…初めて見たな、その表情。
「…綾小路君、貴方何か運動してた?」
「…いや、別に。自慢じゃないが、中学は帰宅部だった。」
…今誰もこっちを見ないで欲しい。
でないと、笑いを抑える口角の筋肉が痙攣しているのがバレて目立ってしまう…!
「それにしては、前腕の発達とか…」
「ねぇねぇ、堀北さぁん!」
鈴音さんの視線が清隆の上半身を見定め始めた直後、桔梗さんの声がそれを遮った。
「良かったら、一緒に泳がない?」
「遠慮しておくわ。」
「堀北さん、泳ぐの苦手?」
「得意でも不得意でも無いわね。」
桔梗さん、気付いてあげようよ。
鈴音さんの明らかに嫌がっているこの顔に、最早隠そうともしない清々しさだ。
仕舞いには、うんざりした様子で立ち上がって離れていってしまった鈴音さん。
139人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れい(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください (2月18日 12時) (レス) @page24 id: 774cbd6690 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:桜 | 作成日時:2024年2月6日 18時