Saw ページ3
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彼は歌は不得手であるし、長いとはいえ男であるから髪はあまり伸びない。かの姫君の如く高貴な金髪の代わりは下品な赤毛と来たものだ。最たるものでは、魔女に閉じ込められている訳でなく彼が魔法使いということ。
陰湿な塔に籠るかつての後輩を、気色めいた私はひっそりと罵った。
プラチナブロンドに覆われたあたまの内側、学生時代の思い出が巡った。
あの生意気な一年生。たった七年の間に四人の同級生を一時ながら聖マンゴに送り、七人の杖を折り、三十五人を医務室に送ったと語り継がれたあの問題児。それが、まさか、こともあろうに、名前を変えて教師になっていただと！？
「よくもまぁ、子供に合わせる顔があったな。」
あいまいな微笑みで返すAにすこし気を良くして、ようやく冷めかけた紅茶に口をつけた。
それからもう一度、蝋燭の灯りに照らされた赤毛の後ろ姿を見つめる。
「しかしお前は、まだ彼に固執しているのか。」
髪を伸ばすのをやめようとしない男の背中に問うた。
「見たぞ、私は。あの宝石はお前が贈ったものだろう。彼は装飾品の類いに金はかけないからな。」
「…宝石？ちがいます、いしです。ただの、いし。」
土気色の首筋に銀のチェーンが下げられ、うすら青い光を放つ不格好な石が通されていた。たまたま見かけたそれを揶揄すると、Aの顔から宗教画のような微笑がたち消えたかと思えば、瀕死のドラゴンが唸るようにいう。
「ホグワーツでは何の教鞭を執っているんだ？」
荒んだ学生時代を思わせるそれに、慌てて私は話を変えた。
「子供らが進むべく道を見失うことがないよう、想いのかがり火にくべる薪を。」
「思想教育か。言葉遊び癖は変わらずだな。」
「ええ閣下。聡明でいらっしゃるのはお変わりありませんのね。」
女に似た敬語、わざとらしいほど目を細める顔、深い緑の服、肉の萎びた体。
(不気味だ。)
アガペーと呼べばそれまでの、泉のように湧いて溢れる愛情。
席を立つと、見送りますわとAは蝋燭を吹き消す。まだ闇に慣れない瞳が人影を捉えることができるのは、部屋がうすら青い光を放っているからだ。
螺旋のような階段を、二人はゆるやかに下りてゆく。
「会うまで分からなかった。まさかお前だとは。」
「そうでしょうとも、ひとは忘れる生き物です。」
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アホ毛50% - ぱんださん» ありがとうございます！私もたくさん考えて書いたので、そう感じていただけたなら幸いです！ (2017年8月12日 17時) (
レス) id: 14b4ba423b (このIDを非表示/違反報告)
ぱんだ(プロフ) - 完結おめでとうございます…！すごい考えさせられました…！なんかもう今感動と切なさと諸々の感情が溢れそうです。幸多かれ…本当もうその通りというか…。素敵な作品をありがとうございました…！少し寂しさもありますが、でもやっぱり完結おめでとうございます！！ (2017年8月12日 16時) (レス) id: 84a45bb0eb (このIDを非表示/違反報告)
アホ毛50% - しぇるふぃあ。@永遠のオットーフィーバーさん» ああ〜〜〜〜！うそほんとに嬉しいです…！拙い作品ではありますが精進しますほんとありがとうございます…！ (2017年7月22日 16時) (レス) id: 14b4ba423b (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。@永遠のオットーフィーバー - ずっと鳥肌立ってます…ハリポタの新作ありがとうございます、更新ひっそりと楽しみにしています！ (2017年7月21日 22時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
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