【ヒプマイ】月が満ちる時に。3 (ページ27)

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story121 ページ27

『長らく会ってないから…久しぶり会いたいな…

それに、会いに行かなきゃ怒られそう』

女は悲しそうに笑ってケーキを1口頬張る。

さっきまでとは違う、どこかに苦しさや悲しさを抱えた笑み。

その顔が一瞬、時を止めたように綺麗でまるで絵のようで惹き付けられてしまった。

思わず、持っていたコーヒーカップを雑にソーサーの上にガシャン！と乾いた音を立てておいてしまった。

『…天国さん？』

｢…あ、あぁ、わりぃ…｣

それからお互いケーキを食べ終えて店を出る。

俺の目的地はここから近いので彼女とはここでお別れだ。

｢ありがとな、ケーキ｣

『いえ、こちらこそ』

｢じゃあな｣

『はい、本当にありがとうございました』

別れの言葉を述べてお互い背を向けて歩き出す。

が、ひとつ思い出した。

彼女は俺の名前を知っているが、俺は彼女の名前を知らねぇ。

それはスッキリしねぇ、と急いで振り返って｢なぁ、｣と彼女を呼び止めた。

『？』

｢名前、教えてくんねぇか｣

『名前…あ！私だけ、天国さんのお名前聞いてましたもんね！

私は、虚城Aです！

また、どこかでお会い出来たら覚えておいてくださると嬉しいです』

｢あぁ、そうだな…

またどっかで会えるといいな、

っと、こんな時間だ。

もう行く。じゃあ、次こそお別れだ｣

『はい！

……天国さん､…また、お会いしましょうね』

｢だな、｣

side:you＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

ナゴヤかぁ…

あの子、あんまり放ったらかしにしてると、怒るよなぁ…

あの性格だもん…

“おみゃーは約束の1つも守れねぇのかよ！！”

…想像しただけで申し訳なくなってくる…。

でも、約束はちゃんと守るよ。

やることが全て終われば、必ず、会いに行くから。

だからあと少しだけ、少しだけ…待っていて欲しい。

と、そんなことを考えながら自由気ままにイケブクロを歩く。

そしてふと思い出した。

そうだ、薬…

もう少しで切れるんだった…、

私は携帯を握りしめて暗い路地裏に入る。

そして人がいないのを確認してからコールボタンを押した。

コール1。

コール2。

コール3…

《なんの用だ》

『…相変わらず、可愛くない電話の出方ね』

《…そんなことを言う為に電話をかけてきたのか？

私も暇ではない。話がないなら切るぞ》