【ヒプマイ】月が満ちる時に。2

story72 ページ26

｢独歩くん、今会社かい？｣


独歩｢いや、今日は珍しく…ハゲかちょじゃなくて上司が社員全員に早めに帰っていいって言ったんだ。

だからもう帰るところだけど…お前は仕事これからだよな？｣


｢実は…今日は遅れて出勤の予定だったんだけどね。今、家にAがいるんだ｣


独歩｢!?Aが！？なんで！？｣


｢A、色々あってうちの店に来ていたんだよ。

だけどちょっと酔ってしまっていてね。今日はもう仕事は切りあげたよ。｣


独歩｢そうだったのか…わかった。とにかく早く帰る｣


｢A、すごく酔っているんだ。驚くくらい｣


独歩｢…頑張って介抱してやってくれ

(そうか、Aももう酒を飲める歳なのか……)｣


｢わかった。｣



電話を切ってソファに横たわるAを見つめる。

規則正しい寝息が可愛かった。

知らない間にお酒まで飲めるようになったんだな、A。

初酒は僕達で祝ってあげたかったのに…

Aの隣に座って彼女の頭を撫でる。

小さな頃、Aの両親が来てAが寝るまで隣にいて欲しい、と僕と独歩に頼んだことがある。

Aが独歩と僕が隣にいなければ絶対に寝ないと我儘を言って泣き出したそうだ。

それからよく各親の了承を得て僕達は3人で寝るようになった。

Aは9歳も年下だったけど僕と独歩君はお姫様を守る騎士になったかのような気分でいた。



｢A、戻ってきてくれてありがとう…もう絶対、Aを失いたくないから｣



Aを起こさないようにすごく小さな声で呟いた。



独歩｢一二三、帰ったぞ…ほ、本当だ、A…がいる…！｣


『…ん？どっぽにぃ？』



独歩君の声に目を覚ましたのかAが起き上がる。



独歩｢悪い、起こしたか？｣


『んーん、A寝てぇないもぉん』


独歩｢そ、そうか…｣

…

全く、独歩君もわかりやすいな。

そんなに顔を赤くして…

こっちまで恥ずかしくなってしまうじゃないか。



独歩｢A、今日はどうするんだ？…帰れるのか？｣


『むりぃーー…ねー、私今日だけここに泊まらせてくれないー？』


｢もちろん、構わないよ。ねぇ、独歩君｣


独歩｢あ、当たり前だ…とにかく俺はシャワー浴びてくる｣



これ以上耐えられくなったのか独歩君は慌ててシャワールームへ駆け込んだ。

さてじゃあ、僕もジャケットを脱いで夜ご飯の支度でもしようかな。



｢Aには甘いものでも作ってあげるからそれまで寝てていいよ｣

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