オレンジジュース。 ページ19
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朝。
岩泉side
｢頼む、この通りだ｣
｢……え、ちょ、は？｣
真っ直ぐに下を見る。
部室の床が見えて、頭を下げているという事実を実感する。
普段、こいつに頭下げることなんかねえから。
いやに、緊張して。
｢湯川の告白を、OKしてやってくんねえか｣
……いや、まあ、俺がこんなの頼むのは、少しおかしいんだろうけど。
でも。
それでも、湯川が傷つくのは避けて通りたい。
たとえ、与える幸せが偽りのものでも。
｢……話の流れは、よく分かんねえけど。でも、悪い。俺、好きなやついるんだわ｣
嗚呼。
予想通り。
｢知ってる。全部、知った上で話してんだ｣
｢……なら、やめてくんねえか。好きな子がいるのに、他の子の告白をOKするような奴にはなりたくねえ｣
頭を上げて、花巻の顔を見る。
真剣な顔。そうだよな。
毎日、部活終わった瞬間飛び出してくような相手だ。どれほど好きなのかは、もう分かりきってる。
｢全部承知の上で言う。湯川の告白を、OKしてくれ｣
花巻の眉間のシワが、濃くなっていく。
そりゃそうだ。突然、部室で告白をOKしろと言われているんだ。しかも、出会って数日の。
｢……こういうこと言いたくねえけど、岩泉を使ってまで告白を成功させようとしてるんだろ。根回しみてえで、嫌だ｣
相当不機嫌な、低いトーンの声。
ぶつかるなら真正面からぶつかってこい、とでも言いたげな。
｢俺が勝手に頼んでんだよ。湯川の意思じゃねえ。ちなみに、告るかどうかもまだ決まってねえ｣
｢は、なら、なんで｣
｢湯川が、本気でお前を好きだからだ｣
拳を、花巻の胸に当てる。
固い胸板。ドスッと、特有の音がした。
｢お前が好きなやつ思い浮かべてみろ。いつもは忘れがちな制汗剤をしたり、部活終わった瞬間汗拭きまくって、鏡を気にしてみたり。
本当、楽しそうだよな、お前｣
何も言わずに、俺の顔を見る花巻が、ゴクリと、息を飲み込む。
｢好きな相手が、他のもんになったら、どうする？｣
ギロりと、花巻を睨む。
言葉の全てを理解した花巻に、更に睨み返された。蛇に睨まれた蛙、ではなく、睨み合う蛇と蛇。
｢……脅してんのか｣
｢さあな｣
好きなやつを取られたくはない。そう物語る瞳が、激しく、怒りを散らす。
｢……なんで、そこまでするんだよ｣
花巻が、俺の胸ぐらを掴んでこう言うから。
もう名前のついている感情を、口にする。
｢湯川Aが、好きだからだよ｣
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あいうえお - すみません他の作品のパスワード教えてほしいですー！ (2023年2月18日 22時) (
レス) id: 8655edc292 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - たまたま見つけたこの小説でしたが、読んでよかったなあと思いました。私も夢主ちゃんと同じ感じで何もないのに死にたいとかめっちゃ思います。だからこそ共感できるし、なんか同じ気持ちの子がいるんだなって嬉しくなりました。好きです！ (2021年6月19日 6時) (レス) id: 85ad8c6978 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まーちさん» いえ！こちらこそ読んでいただき本当にありがとうございます！感動したと言っていただけて本当に嬉しいです。コメントまで残して頂き、励みになります！本当にありがとうございました！ (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まふにゃさん» 歌詞だったんですね！気付きませんでした！今度検索してみますね！コメントありがとうございます！ (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
まーち - こちらの作品とても感動しました。少し、少しだけ感情が薄い私がなきそうになりました。こんな素敵な作品を作っていただきありがとうございます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 65334a4eed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年1月12日 17時
