待ってと言えばうるせえと返る。 ページ15
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「お、岩泉!に……湯川!」
どうしてこうなる。
目の前に現れた昨日の長身男。
相も変わらず胡散臭さが漂うが、それでも、くしゃりとした笑みを浮かべている。
「おう、花巻」
「……やほ」
嗚呼、そっか。男バレだから、岩泉とも接点があるのか。
「お前ら遅かったなー、もうちょいで始まんぞ」
廊下でのんびり歩いてる花巻に言われたくない、と言い返そうとしたけど、流石に此奴の言う通り時間がキツイ。
屋上まで行くのに少しかかるのに、戻ってくる道をゆっくりと歩いていたから。
大して話題が進むはずもないのに、なぜか、ゆっくりしてたから。
「お前ら知り合いか?」
「んー?いや、昨日忘れ物取りに行ったときに会ってな。初対面なのに此奴結構口悪くてよ。なー、湯川?」
ニヤニヤと口角を引き上げるそいつに、少し腹が立つ。
けど、どうにも、心を熱くしていくから。
勘弁してくれ、なんて、心底自分を殴りたくなった。
「……うるさいよ。それより、んなこと言ってる花巻も時間ヤバいんじゃない?私はそろそろ行くから」
愛想なんて何処にもない言い草で、仏頂面を極めて、足早にその場を去る。
もうこれ以上は、ダメな気がしたんだ。
「おー、またな!湯川」
ビクリと、肩が震える。
心臓が、不整脈を訴えて。
「……ん」
少しだけ振り向いて、短く返事をして、顔の熱を無視して。
時計を見たフリをして、急いでいるフリをして走り出す。
勢いよくドアを開けて、仲良い子に挨拶をしながら、いつもの2人の元へ。
「おはよ、2人とも」
「ん、おはよ!」
「……って、A、どったの?」
「え、何が?」
「何って……顔、真っ赤だよ?」
ドクリ。
ドクン、ドクン。
心臓が早い。変に泣きそうになる。
やばい、やばい、やばい。
もう嫌だ。いい加減にしてよ。
死にたがってるはずでしょう?私は、今日にでも死にたいはずでしょう?
それが、なんで。
「なんでもないって。ほら、先生来る」
ドアの隙間から見えた先生を指して、自分の席に向かう。
そしていつの間にやら教室に入ってきた岩泉と、目が合う。
未だに収まらない顔の熱と体の震えと、心臓の鼓動。
バレないか、ヒヤヒヤしたんだ。
"またな!湯川。"
こんな無意味な感情、捨ててしまいたいと思うくらいには、
私は、この感情を後悔している。
机に突っ伏して、どうしようもない心臓と共に、項垂れる。
「……なんで、こんな感情」
嗚呼、気味が悪い。
弱虫があるなら強虫も。→←そう簡単に叶う恋なら、した意味がないじゃないか。
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あいうえお - すみません他の作品のパスワード教えてほしいですー! (2023年2月18日 22時) (レス) id: 8655edc292 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - たまたま見つけたこの小説でしたが、読んでよかったなあと思いました。私も夢主ちゃんと同じ感じで何もないのに死にたいとかめっちゃ思います。だからこそ共感できるし、なんか同じ気持ちの子がいるんだなって嬉しくなりました。好きです! (2021年6月19日 6時) (レス) id: 85ad8c6978 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まーちさん» いえ!こちらこそ読んでいただき本当にありがとうございます!感動したと言っていただけて本当に嬉しいです。コメントまで残して頂き、励みになります!本当にありがとうございました! (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まふにゃさん» 歌詞だったんですね!気付きませんでした!今度検索してみますね!コメントありがとうございます! (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
まーち - こちらの作品とても感動しました。少し、少しだけ感情が薄い私がなきそうになりました。こんな素敵な作品を作っていただきありがとうございます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 65334a4eed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お水。 | 作成日時:2019年1月12日 17時