２話 ページ4
「すみません。助かりました」
フードを深くかぶって雷門中のキャプテン、円藤守に頭を下げる。
運がいいのか悪いのか、敵のキャラバンに拾われた私の心の中は荒れに荒れまくっている。
「おう！困ってるときはお互い様だろ！！」
噂通りの性格だ。
真っ直ぐで、明るくて。彼のもとでサッカーができたらどんなに楽しいだろう。
「フード取らないのか？」
ピクリと体が反応する。
久しぶりに聞いた彼の声は、成長期からか少し低い。
見ないようにしていた彼のほうを見れば、私を疑っているのか、眉間に皺を作っている。
「…ごめんなさい。フードは取れないの」
「……そうか」
あぁ、嫌だ。
こんなの、辛すぎる。
「ま、そんなことどうだっていいじゃないか。サッカーボールを持ってるってことはお前たちもサッカーやるのか？」
少しだけ重たくなった空気を和ませるかのように円藤くんがにかっと笑う。
きっと、彼のこういうところが人を引き付けるのだろう。
「うん。少しだけね」
「うん。好きなんだ」
あ、被った。
毛布にくるまる吹雪くんを見やれば困った顔で苦笑いをしている。
そんな私たちを気にも留めずに円藤くんは「そっか、そっか。俺もサッカー大好きだよ！」なんて言う。
やっぱり、来るんじゃなかった。
彼を見ていると罪悪感で押しつぶされそうになる。
「あの、私、ここでおります。彼のことよろしくお願いしますね」
居ても立っても居られなくなって、早口でまくし立てる。
円藤くんの静止の言葉を無視して、キャラバンから飛び降りると冷たい風が頬を撫でた。
冷静さを失っていた脳が一気に冷やされて落ち着きを取り戻す。
「…諦めろ、なんて無理だよ……」
声を聴いただけで心臓が速く脈打つ。
姿を見ただけで身体の体温が上昇する。
ダメだ。やっぱり、キャラバンに乗らなければよかった。
きっと、彼らと接触しようと思ったのも、有くんに会えると思ったから。それだけのことが、思考を鈍らせた。
「私の弱点になる…か」
ガゼルとバーンに言われたことを思い出した。
確かにそうなのかもしれない。と自嘲気味に笑うのと同時に携帯を開く。
“ジェミニストームの活躍をこの目で見る”
そう短くメールを打てば、送る相手はヒロトだ。
送信完了の文字が画面に表示されると携帯の電源を切る。
「せめて、最後に……」
新イナズマイレブンの活躍を見させて。
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作者名：ハル x他1人 | 作成日時：2019年5月7日 22時
