1 君を追いかけて ページ1
渚サイド
「ハルちゃん!」
僕は、岩鳶スイミングスクールにいた頃からずっとそう呼んでいた。
「___渚。」
静かで、何を考えているのかを見透かせないような声でも。
僕はその強い意思のあるような声が、僕の名を呼ぶその声が。耳にこびりついて離れなかった。
当然、小学校も中学校も違ったけれど、ハルちゃんが岩鳶高校にいる。そう友達から聞いたとき、思ったんだ。
「お母さん。僕、岩鳶高校に行きたい!」
お母さんの反対を押しきってでもいきたかった。
もう一度、ハルちゃん達とリレーを泳ぎたい。
____________________________
「じゃあ、いってきます!!」
僕は、駅まで走りながら、新しい高校での生活を楽しみにしていた。
やっと、やっとハルちゃんに会えるんだ。
数年間思い続けてたことが、ついに今日叶うんだ。
入学式を終えて、1年生の大半は家に帰っていく。
僕は、2年生の教室まで走った。
「すいません!ハルちゃんいますか!?」
教室はざわついているけど、そんなの気にしてる場合じゃない。
「えっと...な、七瀬のこと?七瀬なら、橘と屋上に行ったぜ」
「ありがとうございます!!」
屋上に向かってまた走った。今日は走ってばっかりだなあと思う。
「あっ!ハルちゃん、まこちゃん!!」
「……え?!な、渚ァ!!?」
「…真琴、誰だ」
「ほらほらっ、岩鳶SCの時の!」
「…渚?」
「うん。そうだよ!」
そうだよ。僕ハルちゃん達を追いかけて来たんだよ。
また、『見たことのない景色』を見るために。
ハルちゃん、まこちゃん。
「一緒に、リレー泳ごうよ!」
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作者名:空白可能。 | 作成日時:2014年8月21日 14時