検索窓
今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:1,230 hit

変わっていく日々で ページ19

.



「真冬、早くー」

「かなたさん、はやいっ」



息を切らしながら、前を走る彼を追いかける。昼過ぎの東京は、雲一つない晴天で心地よい。



「マジで体力ないな、お前」



やっと追いつき呼吸を整えていると、呆れた顔が仁王立ちしていた。



「彼方さんが速いだけです!それに、まだ時間ありますから!」

「え、2時半じゃなかったっけ」

「3時に変更になったって言ったでしょ!」



そうだっけ、ときょとんとしている彼方さんに、僕はため息を吐く。

こういう時だけ頼りないんだから…



「あ、ラインだ」

「誰からですか?」

「彼女からだけど」

「はぁ!!?僕のことは捨てたんですか!?」

「うるさい」



喚く僕を無視して、スマホの画面に目をやっている彼方さんをじっと睨む。すると、観念したように「分かったよ」と言い、スマホをしまった。



「大体さぁ、お前のボーカル結構人気だぞ?ギターもできるし……作ろうと思えば作れるだろ、彼女」




鬱陶しそうに言って、彼方さんは前方に視線を移す。ふわり、と、吹いた風が、彼方さんの前髪を掬った。

その風は、あの海風を思わせる。



「……僕は、いいですよ」



彼女と歩んだ、一欠片の思い出を、瞼の裏に投影する。


いつまでも色褪せない、幸せを形作ったような、完璧で未完成なフィルム。



「まあ、僕が誰かと付き合ったら、愛されすぎて大変なことになっちゃいますからね」

「逆だろ」



ドヤ顔で言ってやったのに、軽くあしらわれ、「そんなことないですぅ!」と否定する。

すると、さっきと同じドーンで「はいはい」が返ってくるもんだから、もう知らないと不貞腐れる。



「ごめんごめん」

「はっ、もういいです。今日のMC振りませんから」

「…お前喋れんの?」

「う、うるさいです!」



僕がコミュ障陰キャなのを知っていてそんなことを言うのだから、彼方さんは性格が悪い。今だって、僕を見て大笑いしてるし。



「あ、電話だ」



怒る僕をよそに、彼方さんは震えているスマホに気が付くと、通話ボタンを押して話し始めた。



「また彼女ですか!」

「真冬!今日やっぱり2時半からじゃねーか!」

「え?」



誰と話してるのかと思いきや、突然僕に振り返って大慌てでとんでもないことを言う。



「向こうの人全員いるって!」

「うそ…」

「走るぞ!このバカ!!」

「すみませんんん!!」



謝りながら、僕たちはまたさっきと同じ構図で走る。








瀬奈、見てますか?


僕、夢叶えたよ。

辛いこともたくさんあったけど、頑張って乗り越えた。



君と歩いた時間、一秒たりとも忘れてないよ。







君を愛せて、幸せだった。

さよなら→←18



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (3 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:夢小説 , utit , mfmf
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Ir | 作者ホームページ:http://manaaa  
作成日時:2023年2月18日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。