苦手なはずなのに【2】 (ページ12)

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31話ページ12

『風きもち～…』

店員さんに
『あの席に烏龍ハイ一つお願いします
　あ、あととびきり濃いめで』
と伝えた後に二階のテラスに来た。

みんな置いてきちゃったけど
大丈夫だよね

少し疲れた。

彩香ちゃんをのぞいて
全員先輩、福山さんと神谷さんは
石田さん、遊佐さんに比べてだと
年が近い方だから良いけど

やっぱり石田さんと遊佐さんの前だと
力が入っちゃうな

ーカチッ、カチッ

ジッポをいじり
自身の煙草に火をつける

「あ、煙草吸ってる」

遊佐さんだ。

『…よく彩香ちゃんが許しましたね』

遊佐さんがいきなり現れ私は焦った

煙草を吸っている事を知られたくなかったので
私は素早く持っていた煙草を
灰皿に近づけると

「あ、良いよ？火つけたばっかでょ？」

遊佐さんが灰皿のもとにある
私の手を抑えた。

ありがとうございますと
返事をし触れられた所が気になった

この人手あったかいな…

遊佐さん少し酔ってるのか？

「彩香ちゃん、潰してきちゃった」

『え？』

遊佐さんが言うには
「これ、美味しいよ」と好意でお酒をすすめ
お酒に弱い彩香ちゃんは速攻潰れてしまい
福山さん達に任せてここへ来たらしい

その好意で渡したのが
日本酒だとかでおちょこ2杯で…
潰れてしまうのも無理もない

“好意で”を強調してくるあたり
私は悪意を感じる。

かわいそうだけど

『悪い人ですね』

つい、笑ってしまった。

「お、笑った」

遊佐さんが呟いた

私が、首を傾げていると
遊佐さんはゆっくり話始めた。

「なんか、やっと僕に笑ってくれたから
　ホッとしちゃった
　
　それと
　いつもは挑戦的だしね
　今日は、そのいつもと少し違う気がする

　石田さんばっかりな感じ」

最後の一言に
やっぱり石田さんのことを想い
遊佐さんのお刺身をやめさせうとした事を
恨んでいるのかと思った。

食べ物の恨みって怖いな。

『すみません…
　石田さんによくお世話になっていたので
　つい気になっちゃうんです
　石田さん少々嫌いな物が多いので』

苦笑いをしていると
遊佐さんが
あのさ、と少し呆れた顔で呟く。