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#134 ページ34

玲於side

Aのいなくなったリビングでは、
沈黙が続いていた

北「家族は…やめないよね？」

意外にもその沈黙をやぶったのは北人だった

亜「それは、お前達次第かな」

北「僕にはここしか…」

亜「なぁ、皆、」

亜嵐くんは机に両肘をついて、手に顎を乗せる

亜「…両方なんて、無理なんだよ」

北「っ、」

亜「ここを取るか、Aをとるか」

ここにしか居場所のない俺らにとって、
それは究極の選択だった

亜「でもひとつだけ、両方を叶えられる選択肢がある」

全員が彼に注目した

亜「…Aを皆で愛すこと」

龍「っ…」

亜「考えてみなよ、自分が選ばれなかった時のこと」

全「っ、」

亜「自分はもう二度とAに触れられない。
キスもできない、感じた顔を見ることもできない」

全員が亜嵐くんの次の言葉を待つ。

亜「でも皆のものにすれば？」

龍「…Aに触れられる…」

慎「いつでもAと一緒にいられる…」

北「誰のものにも…ならない…」

亜嵐くんが不敵に笑った。
勝利を確信したように。

亜「うん、いい目…」

皆の目は、昔に戻っていた。

さっきのように、Aを純粋に愛する男達じゃない。

壱「でももし…Aが俺達以外の人を選んだら？」

壱馬の言葉に全員が不安げな顔をする。

亜「大丈夫、それは絶対にないから」

その答えに全員が安心した。

だって、今まで彼がそう言って、
大丈夫じゃなかったことがない。

彼はいつだって、自分の言うことを現実にしていた。

亜「…玲於」

玲「っ…」

亜「…分かってくれるね」

彼はきっと知っている。

これは、俺に向けられた最後の忠告だろう。

玲「…分かった」

Aを自由にしてやりたい。

陽の光が当たる場所で、正しい愛に恵まれて。

だけどもうここに、俺の手伝いをしてくれる人はいない。

皆1度は目が覚めたのに。
いとも簡単に引き戻してしまう。

それほど彼は魅力的で、みんな彼の言葉に信頼を置いてる。

皆が愛されなかった時、愛してくれたのは

___________彼だけだったから