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五条先生の「恋愛ごっこ」と言う単語を聞いた瞬間、心がさぁっと冷たくなったのが分かった。
熱々だった心が、急速冷凍されたみたいだった。
思わず冷たくなった箇所を押さえた。
「心」って本当に胸の真ん中にあるんだ、そんなことを考えられるくらいには、私の中に少しだけ冷静な自分が居た。
これ以上は聞いていられない、聞きたくないと思い、私は胸を押さえたまま、踵を返して寮までの道を歩いた。
寮までの道はとにかく頭を真っ白にすることに努めた。そうしないと、ぐちゃぐちゃな感情に心を押しつぶされそうになって、動けなくなりそうだったから。
幸いにも誰にも会うことなく、寮の部屋に入ることができた。
ドアを閉めた瞬間、身体中の力が抜けて、靴を脱ぐこともなくその場に崩れ落ちた。
身体がガタガタと震えた。思わず自分の身体を自分の腕でぎゅっと抱きしめた。
不思議と涙はあまり出なかった。
ただ、淡々と話す五条先生が怖かった。
五条先生からは時々、愛しいものを見るような目を感じていたのに、あれも恋愛ごっこの一貫だったのかな。
どのくらいそうしていたのか分からないが、この部屋に入った時には茜色に染まっていたはずの壁の色が、今は薄暗い濃紺のような色に染まっていた。
もうこのまま、一生ここに座っていたいと思うほどだった。
少しだけ体勢を立て直した時に、スカートのポケットに入れていたスマホが滑り落ちた。
光ったディスプレイに目をやると、何件か通知を知らせるアイコンが光っていた。
どうせ、通販のメルマガとかだと思う。
スマホを手に掴み、ゆらゆらと立ち上がった。
靴を適当に脱いでふらふらと部屋の中を進み、
制服がシワになることも気にせずに、ベットにゆっくりと横たわった。
食欲なんてわかない。今までどうやってご飯を食べていたんだっけ?身体が重くて鉛みたいで動けない。
首だけを横に向けると、窓辺に置いた白いバラが視界に入った。
1番大きかった蕾は、もう満開を過ぎて花弁は開き過ぎているくらいで。
開き過ぎた花弁は重いのか、ぐったりと項を垂れている。
──自分みたいだ。
私の五条先生への強すぎる想いが限界を超えて大きくなり過ぎてしまってしまったように、このバラの蕾も自分の姿をより美しく見せようと大きく花開いた結果、自分で支えられない程になってしまった。
自分と似ているなんて思われて、このバラは不服かもしれないが。
私の胸に咲いてしまったこの花は、自ら手折らなければ。
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夢花(プロフ) - ユリ.さん» ふふふwwwそうなんですかwwwこれぞ小説のちか(((殴 メタメタァ (2021年5月7日 9時) (レス) id: 78d9e81099 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ.(プロフ) - 夢花さん» マジで息できないですよね。(笑)終わった後息も絶え絶えになりますもんね!夢主ちゃんも呼吸困難になったと思いますが、ここで死なせてもアレなのでちゃんと息できたことにしてます。(笑) (2021年5月7日 7時) (レス) id: c519aef02a (このIDを非表示/違反報告)
夢花(プロフ) - 普通にこしょこしょは死人でますよ?だって息できないもん{笑ってるから}(・_・) (2021年5月6日 16時) (レス) id: 78d9e81099 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ.(プロフ) - 陽菜月さん» 口から心臓はやばい!(笑)しまってしまって〜(笑)もう少し待っててくだされな!まだ本調子になれず…(;_;) (2021年4月16日 6時) (レス) id: 5035154a58 (このIDを非表示/違反報告)
陽菜月 - もう、続きをワックワック胸を踊らせながら待ってます!!(ワックワック!んあ!?ワクワクしすぎて口から心臓が!?グロイ!) (2021年4月15日 22時) (レス) id: 6820255b8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユリ. | 作成日時:2021年4月2日 20時