鴉といっしょに ページ39
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『今夜』とは実際何時頃なのだろうか、と首領と別れてからふと思ったが、なるべく早く帰る方がいいということは変わりない。それよりも母さんにだけはこの事を伝えなければならない。
さっき、母さんに連絡して家に帰ってきてほしいと頼んだ。勿論、この事を話す為だ。これは電話越しやLINEなんかでは駄目だから。
嗚呼、緊張するなァ……
***
夕方。母さんが帰ってきた。
「ただいま。中也くん」
「母さん、おかえりなさい……」
「元気無いなんて珍しい。いつもなら体調悪くてもいつも通りのフリしてるくらいなのに……何かあったの?」
暖かいお茶淹れるわね、と持っていた荷物を玄関に置きっぱなしにして台所でお茶の準備をし始めた。
「その……」
「無理して言わなくてもいいのよ。大方もう直ぐ帰るとか、そういう事でしょう?」
「!!なんで……」
「なんでって……」
呆れたように、はァ…とため息をついて、俺が知っている母さんの中で1番優しい顔で「貴方の母親だからでしょう」と言い切った。
「たった半年でも、住む世界が違っても、私たち3人は家族でしょう。貴方は私の大切な息子よ」
ティーパックを入れたばかりのまだ薄いお茶をロウテーブルに置いて、母さんは俺の頭を優しく撫でてくれた。
「ッ…子供扱い、しないでください……俺だって22ですよ」
「あら。母親に敬語使うの?帰るって報告とか、もう分かりきっている事は言わなくていいから」
やめてくれ。そんなことをされたら、この家を離れるのが辛くなっちまう……
「言いたいこと言えばいいじゃない。泣きたいなら泣けばいいじゃない。ここなら周りを気にする必要も無いし、泣けるのはきっと今だけよ」
「俺は……」
そんなに泣きそうな顔をしているのか、俺は。
「本当は、帰りたくない。もう少し、あと少しでいいから、Aと、母さんと一緒に暮らしていたいッ……でも、向こうにも仲間がいるし、首領や姐さんもいる。幹部の俺が穴を開ける訳にはいかねぇんだ……だから、帰らなくちゃいけない。俺の帰る場所が、向こうにはあるから……」
「そう……なら、早く帰ってあげなさい。今まで本当に有難うね。楽しかったわ。Aには伝えておいてあげるから」
そう言って、俺の背中に手を回す。
嗚呼、やっぱり母さんには適わないや……
母さんの服に染みが付いている事に気づいて初めて、俺は自分が泣いていた事に気付いた。
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フレタスートめんどくさい - 銀魂しか勝たん!! (2022年8月10日 19時) (レス) @page10 id: 5a52c0f3ec (このIDを非表示/違反報告)
ぱけぽん工房(プロフ) - えあああああ!?(語彙力)ナニコレ最高です…私も中也君好きなんですよ....(あとはルーシーちゃんとQくんと梶井さんです)迷惑でなければ、私も文マヨと第五フレンドになってもらっていいですか....!?(((久しぶりに同志に出会えました。)))) (2020年2月19日 22時) (レス) id: dc4902060f (このIDを非表示/違反報告)
Q(プロフ) - 文マヨでQちゃんが実装されたときは発狂しました(突然の告白)。推しなので60回ほどガチャを回しましたがまだ出てきません。あ、それと中也さんの異能物凄く便利ですね。家に一人欲しいです。ゴーゴリさんまたは猟犬部隊でも構いませんので誰か来てください。 (2019年12月23日 21時) (レス) id: 6648728ee7 (このIDを非表示/違反報告)
ラズベリー(プロフ) - 私ユリイ・カノンさん大好きなんです!語りたいです (2019年12月8日 19時) (レス) id: 56fb91a534 (このIDを非表示/違反報告)
しぐれくじら(プロフ) - おーーーー!面白い!トリップ物でこの作品が1番好きです!私の好みドストライクの作品!!!更新頑張ってくださいね! (2019年11月18日 17時) (レス) id: 5858b56321 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:嘘つきちょこれーと | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/247/
作成日時:2019年5月6日 19時