苦手なはずなのに【10】

303話 ページ14

『ちょ、ちょ何ですか！？』


誰も来ないような影が入っている
場所まで連れてこられた

遊佐さんは掴んでいた手開かせる


「ちょっと待ってね〜…」

私の手のひらに何かを指でかく


………人？


「はい、どーぞ」


それを10回程かくと私に笑顔を見せる


これは、緊張しないおまじない…？


ベタだ……



そう心で毒を吐きながら
私は遊佐さんの顔をチラ見する


「ん？これ知らない？」



不思議そうに笑顔で見つめられる


私はちょっとだけためらいながらも
それを飲んだ



その後ぎゅっと手を握られ
私はまた遊佐さんの顔を見た



「Aちゃんなら大丈夫
絶対上手くいく、心配いらないよ」


嘘なんてついてないような顔

どんどん自分の顔に血がめぐっていく感覚


気持ち悪い感覚と
猫背が知らないうちに治っている


この人は純粋に
私の事を元気付けそうとしている事が
感じ取れた



あたたかい気持ち


素直にどんな気持ちかどうか
答えろと言われたら…


嬉しいの一択だった




『ありがとうございます』


私が目をそらさず
少しはにかみながらお礼を言うと
遊佐さんは一瞬だけ固まって


「本当に可愛いなぁ…」

と、今まで以上の笑顔を私に向ける




握られた手はもう離してはくれないんじゃないかと
思う程に大切に握られていた



ハッとした自分はプイッと
そっぽを向くと同時にその手から逃げ


『もう！行きますよ！！』

と、先に歩いた



「はーい」


遊佐さんの上機嫌の声を背中に
私は握られていた手を
自身でまたギュッと握った

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