【hpmi】わたしが中王区に住まない理由

理由4 ページ4

「はぁ…」

と朝っぱらから大きなため息を連発させている。
朝は格別弱くもないし仕事は嫌いじゃない。

なら何故なのか。

今日は社員全員で登山だからである。
登山にいる専門の道具はこちらで準備するので心配なく、と部長は呑気に笑っていたがどうして三十路前の体にムチ打ってせっかくの休日を潰さなければならないのか…。

こういう時に限って腹痛も頭痛も起きないのが不思議で仕方がない。歯の一本でも痛んでくれれば、と歯をカチカチと嚙みあわせるも虫歯は今日は休日とばかりに痛みの１つも起こしやしない。

何故こんなにも登山が嫌いかと言うと、前方に述べた理由もあるが何よりわたしは方向音痴に磨きがかかっている上に集中すると周りが見えなくなるという最悪の機能つき。はぐれてしまったらどうしよう…。と今から頭を抱える。
憂鬱だが絶対来てくださいね、とみんなから念を押されてしまったら休めるわけがない。

もうそろそろ家を出ないと遅刻してしまう、と重い腰を上げため息と共に家を出た。


「Aさん来てくれたんですね〜〜！！」

だの

「Aさん絶対休むと思ってましたよ！」

だの着くなり言われたがだったら休めばよかった…。と密かに頭を抱える。
というか色白な所為もあるがどこまでわたしはインドアだと思われているのだろう。
……もうすこし運動した方がいいかな。






「では◯◯部署の皆さん出発いたします〜！」

というよく通るバスガイドさんの声のするバスへ乗り込んだ。
山登りなんてしたことないし、絶対に頭の中がしんどいとか疲れた、でいっぱいになれば迷子になってしまう。
……山で迷子なんて助かるんだろうか。
……背中に悪寒が走る。余計なこと考えなきゃよかった。

いつもお昼をいっしょに食べる仲のいい後輩に

「A先輩って登山とかしたことあります？」

と聞かれた。

「無いよ〜……。もう迷子になったらどうしよう……。」

と返すと

「山で迷子って遭難じゃないですか！気をつけてくださいよ……？」

と言われたがあまりに返す言葉が無かったため苦笑いを返しておいた。

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