◇第十条 ページ10
完全に治りきっていない胸の傷を手で抑えながら、廊下を歩く。
すると、真選組の中庭で一人黙々とバドミントンの素振りをしている人を見つけた。
えっと、確かこのお方は……?
「ふぅー。よし、今日はこんな感じか……あれ、君は」
「こんにちは!えっと………」
彼に声をかけられ、歩みを止める。
声をかけられたのは凄く嬉しいけど、肝心な名前が浮かんでこない。
確か……確か!
「……山口さん!」
「あっ、山崎です」
「………すみません」
人の名前を間違える事ほど、失礼な行為はない。
私はお辞儀をし、彼に謝罪をした。
「ああ〜そんなにかしこまらなくて大丈夫ですよ。まだ数回しかお話したことないですもんね」
真選組の屯所にお世話になってから一週間ちょっとが経過した。
私が使用している空き部屋には、よく勲さんが出入りしている。そのせいもあって、真選組の中では彼と会話をすることが一番多い。
その次に、勲さんの付き添いでよく来る土方さんや沖田さん。
顔と名前が一致している人物は、まだこの三人しかいなかった。
「山崎……あがるさんでしたっけ?」
「あっ、退です」
「………………」
私はどうやら人の名前を覚えるのが苦手らしい。
「まぁ……俺の事はそんなに気にしなくていいですから!それより、あれから傷の調子はどうです?」
一瞬チラッと左手で抑えてる胸の傷を見ると、彼は廊下に腰掛けた。
隣に座っていいのか悩みつつも、ちょこんと座る。
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作者名:みさ | 作成日時:2016年7月16日 21時