◇第四十条 ページ40
「っ、あのっ……わたっ、しは__」
目から零れ落ちる涙は止まる勢いをみせず、いつの間にか言葉を紡ぐことが難しくなっていた。感謝の言葉を、皆のことが本当に大好きだったと伝えたいのに、口を開くたびにしゃくりが出てしまう。
私、こんなにも真選組の皆のことを____。
自分の中で「真選組」という存在がまさかここまで大きくなっているとは知らなかった。
当たり前のように毎日一緒にご飯を食べて、同じ屯所内で寝起きして、暇なときは話し相手になってくれて……。
当たり前のことが、当たり前じゃなくなる。
それがどれだけ寂しいことなのか。
隣に座っている勲さんが私の背中を優しく摩る。その手はとても温かくて__……。
小さく咳払いをしてから彼は口を開く。
「"いたい"という理由だけでは、ダメだろうか?」
「……?」
……どういうこと?
理解に悩んでいる私をよそに、土方さんと沖田さんは彼の意見をなんとなく察しているかのよう。
「あーーえーと、つまり……」
「……」
「Aがココに"いたい"なら、いてもいいんじゃないかと俺は思ってな!」
「……!?えっ、でも」
土方さんと初めて出会ったとき、彼に言われた言葉が脳裏によぎる。最初はどうとも思わなかった言葉だったけれど……、日が経つにつれ、いつしかその言葉は私の心を重くしていった。
「でも……、あんたの怪我が治るまではここに置いてやるって土方さんが仰られてて……!だから私は……っ」
そこまで話すと、沖田さんが土方さんに向けて言葉をかける。
「あーぁ……土方さんも酷い人ですね。その一言のせいで彼女をこんなにも傷つけるなんて。さすが土方さん。よっ、女泣かせー」
「いや、嬉しくねェーから」
「トシ……お前……」
「近藤さんまで……チッ。前言撤回だ」
「……えっと」
頭をぐしゃっと掻いた後、彼は胸ポケットに入れていたタバコの箱を取り出し、一本だけ指に取ると慣れた手つきでタバコに火をつける。
「ったく、鈍い奴だな。だからその言葉はナシだ。忘れろ」
「!!」
「近藤さんの言ったとおり、お前がいたきゃいりゃあいいだろ」
「……まったく、素直じゃねーや」
ふーっとタバコを吹かす土方さん。
隣でやれやれといった表情の沖田さん。
私に対して優しい微笑みを向ける勲さん。
そして勲さんは椅子から立ち上がり周囲の皆に届くよう、大きな声をあげ、こう言ったのだった。
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作者名:みさ | 作成日時:2016年7月16日 21時