◇第三十八条 ページ38
慣れない呼び方に苦笑いをうかべ、私は隊士さんたちと廊下をすれ違う。
「A姐さん!おはようございます!」
「おっ、おはようございます」
「Aの姉御、おはようございます」
「ど、どうも……」
出会う隊士さんたち一人一人に姉(あね)さん、姐さん、中には姉御と呼ぶ隊士さんたちに向けて挨拶をする。この呼び方が広がったのはつい数日前。ことの発端は斎藤さんと友達になり、ノート越しではあるが会話をするようになってからだ。
もう一つはこの屯所に来てから勲さんや土方さん、そして沖田さんの4人でいつも会話をしているということ。その光景に「凄い人」というレッテルを貼られたのと、斎藤さんとも会話をしていること。この2つの理由で私は隊士さんたちから尊敬の眼差しを向けられ、今の呼び名に至る。4人で普通に会話をしているだけでも凄いことらしいのに、あの斎藤さんとも会話をするようになったことで更に「凄い人」と思われているらしい。
この話は全て山崎さんから聞いた話なんだけれど……。
私は皆からそう呼ばれるほど、強い姉御でも姉さんでもないのになぁ。
とぼとぼ歩きながら自分の部屋へと戻って今後の生活について考えた。傷に関してもなにか仕事を任せられれば、簡単な肉体労働なら大丈夫なくらいには治りかけている。いくら真選組の皆さんが優しいからと言っていつまでもご厚意に甘えてばかりでは申し訳ない。
……今日の夕飯の時にでも皆に言おう。
小さな覚悟を心に決めて、そのまま私は夕飯の時間まで自室にこもった。
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作者名:みさ | 作成日時:2016年7月16日 21時