◆第三十一条 ページ31
「おい、チャイナ」
「は?なんだヨ」
「彼女を屯所まで送ってけ。こっからだと迷子になりかねないからな」
「えっ、沖田さん……?」
近くにいた神楽ちゃんは、私をじっと見つめたあと沖田さんに向き直る。
「チッ、お前の頼みなんて正直聞きたくねーけど、Aちゃんの為ならしょうがないネ。後の事は頼んだアルよ。銀ちゃん、新八」
「はいはい、無事に送り届けてやれよ」
____神楽ちゃんと暗い夜道を一緒に歩いている最中も、ズキズキと傷口が疼く。
「辛いならどっかで休むアルか?」
「別に大丈夫だよ……って、ん?」
何で傷のことを知ってるの……?
「Aちゃんは隠してるつもりでいたかもしれないけど、みんな大体は察してたヨ」
「えっ……」
「でもAちゃんが笑顔で大丈夫、何ともないって言うから、あえて気付かないフリしてたネ」
「じゃあ、あのとき沖田さんが私に言った言葉って……」
「早く屯所に帰らせたかったからじゃないアルか?アイツはさっきの件で帰るのが遅くなりそうだったしな」
私はまだ沖田さんについて全然詳しくない。
むしろ知らないことの方が多い。
「私と一緒なら迷子になる事もないし、いざとなれば敵と戦う事も出来るネ。まぁ、あのサディストが他人のことを心配するなんてイマイチ信じられねーけどォ?」
私の横で平然と鼻をほじりながら、話す神楽ちゃん。
「沖田さん……心配してくれたのかな?」
神楽ちゃんの言う通り、私のことを心配して言ってくれてた言葉だと思うと、胸の中がポカポカしてきた。胸の痛みも少しだけひいたような気がする。
「屯所までもう少しだけど、あんまり辛いようだったら休むアルか?」
「ううん、大丈夫。心配してくれてありがとう、神楽ちゃん」
沖田さんが私を気遣って言った言葉なのかそれとも……。
ただ邪魔だから早く帰らせるようにしただけなのか。本当の気持ちは分からない。
けれどこれからは、もっともっと沖田さんの事を知りたい。
そう思う自分がいた。
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作者名:みさ | 作成日時:2016年7月16日 21時