二話 ページ3
「…っ、私…ずっと虐められてたんだ、沖田くんに…。中学校は二年生の一学期までこっちに居て…沖田くんとは一年と二年一緒で…っ!友達も出来なかった、女の子たちからは沖田くんと仲良いからって仲間外れにされて、私は仲良くないのに!泣き虫、直って戻ってきたのに、うっ、ひぐ、…っ」
温かいコーンスープの缶を握りながらそう泣く藍澤に少し、いやかなり同情した。アイツに虐められていたからあんなに怯えていたのか。…藍澤の見た目はザ・美人という感じだが、こんなに中身とギャップがある女は初めて見た。
「…んな泣くな。目、腫れちまうっつってんだろ?」
藍澤の涙を指で掬い取ってやる。目元がもう桃色に染まり始めているのを見て俺はハンカチを押し当ててやった。
「…あったかい…っ」
泣き止んだことに少しほっとした。なんだか保育園の小せえガキの面倒を見てるみてえだ。藍澤は恥ずかしそうに笑いながら俺の手を取った。
「…土方くんの手も、あったかい…」
「…ッ!!…そ、そうかよ。そ、そろそろ授業始まるぞ」
立ち上がらせてゆっくりと寒い廊下を二人で歩く。藍澤はきょろきょろと校舎を見渡して嬉しそうにしていた。先ほどまであんなに泣いていたというのに、現金なやつだ。
教室に着くともちろん席に座っている生徒なんか片手で数えられる位しかいなくて呆れた。藍澤は俺の隣なので嬉しそうに授業中も小さな声で話しかけてくる。
「…土方くん、さっきはありがとう。私、もう泣かないようにする!」
「…そうかよ」
照れながらもそう返すと、また藍澤は嬉しそうに笑った。なんとなく総悟の方を見るとこっちを睨むように見ていた。それに寒気がして慌てて前を向く。
授業の終わりのチャイムが鳴る。総悟が近づいて来たのを見て俺は内心でまた深い溜息をついた。
「…おいA。なに土方の野郎とつるんでんでィ。男に媚び売ってヘラヘラしてんじゃねぇよ」
「…っ、媚びなんて、売ってないよ。私は、ただ土方くんと友達に、なりたくて…っ、それに沖田くんに関係ないでしょ…?」
「…見ててむかつくんでィ。大体お前みてぇなブスが友達作るなんざ生意気過ぎるんでさァ」
また瞳をうるうるとさせた藍澤は俺に視線を向けた。またかと思いながら藍澤を俺の後ろに引っ張る。
「…こいつにちょっかい出すな。次泣かせたら許さねえぞ」
「あぁ?アンタに関係ね、うぉっ!?」
…チャイナによる蹴りで、総悟は沈んだ。
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光華(プロフ) - お疲れごはん、リアルタイムで楽しく読ませていただいてます!こちらも面白いです!私は完全に土方さん推しなので、土方さんに落ちないかな((殴 どちらも更新楽しみにしてます! (2020年6月6日 22時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マピト | 作成日時:2019年12月6日 22時