金塊探しの旅 〜陸〜

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『有古ニシパの名前は和名か？』

有「あ、あぁ、イポプテだ」

『いい名だ』

山菜を探しながら他愛のない会話をする

『イポプテニシパ、ギョウジャニンニクがあったら沢山取ってくれ
鹿肉とギョウジャニンニクはとても相性がいいんだ』

有「わかった」

せっせと山菜を集める有子を見て、サムルは微笑んだ

有「な、なんで俺を見て微笑んでるんだ？」

『いや、イポプテニシパは真面目なやつだなと思ってな

深い意味はないんだ』

有「そうか…


あの、」

有古が何かを言いかけた

『どうした？』

有「…何故君のような女性がこの金塊強奪戦に参加してるんだ？」

サムルは手を止めた

『……

実は、最初はちゃんとした理由はなかったんだ

だけど、杉元達と旅をしていくうちに
アチャの事や金塊争奪戦の先にある未来を
知りたい…
いや、知らなければならないと思ったんだ


アイヌのため、
ﾀﾋんでいった友人たちのため、
今いる友人たちのため、

アシリパのため』

真っ赤な瞳が有古を映し出した

有「……そうか」

有子はサムルの手を握った

有「俺も言えた義理ではないが、辛くても溜め込んではいけない
周りの人を頼るんだ

旅順にいた時の君ではないんだ」

『！

何故それを？』

有「一度だけ旅順で君を見たんだ
その時君は交戦中だった」

ぽつりぽつりと有古の口から溢れる言葉に
サムルは聞き入っていく

有「その時の君は獣の如く敵を殴り倒していた

女性にこんなことを言うのは失礼かもしれんが、
獣のに取り憑かれたかのような戦い方だった

だけど、その反面、
とても悲しそうな、辛そうな顔をしていた

まるで本来の自分を押し殺している感じだ」

『…』

有「でも、今の君はあの時に比べて表情が柔らかくなっていて、幸せそうな顔をしている」

そう言うと有子が頭を撫でた

『杉元たちと出会ってからよく笑うようになった
杉元たちのおかげだ』

と言って
カゴいっぱいになった山菜を持って歩き出した

『イポプテニシパも苦しいときは頼るんだぞ

私はお前を信じてるからな』

有「！！」

顔は見えないが多分サムルは微笑んでいるだろう
そう有古は思った

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