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お月様が見てる 16 ページ48

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 すっかり秋めいてきた今日この頃。

 自転車に乗って走るのも心地よくて、まさに気分爽快。

 まだまだ緑の多い公園沿い。信号待ちをしながら、雲ひとつない空に向かって深呼吸した。


「気持ちいい」


 静止画のような景色と浄化されそうな空気を独り占めしている。


 広い公園には入り口がいくつもあって、その一つはうちのカフェへの近道だった。


 信号が変わると同時に走り出す。


 高い木々の間を抜ける頃、芳しい香がふわりと鼻をくすぐった。

 街路樹の間を縫うように並ぶ金木犀だ。


「そんな季節か」


 青空に映えるオレンジの花。小さな花が集まって大きな花のようになって咲いているのがポップで面白い。


 カフェまであとひと漕ぎというところで、オレは足を止めた。


 金木犀の並ぶ先に人影が見え隠れしている。

 現れては木に隠れ、またすっと姿を現す。見上げたかと思うとしゃがみ込んだ。

 見覚えのある人影に、オレの頬が緩む。



 金木犀の木の周りをぴょこぴょこ動く姿は、お約束の小動物。たまらなくかわいいそれは、オレの大好物でもある。

 

「おはよう」


 声をかけられると思っていなかったのか、北山は肩をピクリと動かしてこちらを見た。


「お、おはよう」

 ちょっと、キョドってる。


「な、何?」

「何してるのかなって」


「…キンモクセイ、見てた」


 それはわかるけど、そんなぴょこぴょこ見る?


「キレイだよね、金木犀。それに」

花の集まりにそっと手を伸ばす。

「いい香りがする」







※タイトル訂正

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作者名:lettuce | 作成日時:2022年9月11日 2時

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