検索窓
今日:1 hit、昨日:14 hit、合計:24,012 hit

お月様が見てる 13 ページ40

現実は残酷だ。



 北山はオレに触れられたくないとわかってしまって、少なからずショックを受けた。

 そのままロッカーから荷物を取って、そのままチャリに乗って帰ってしまいたかった。


 なのに。


 オレはまだ海賊で、ロッカールームから出られずにいる。

 夜遅いとはいえ、さすがにこの格好で自転車をこぐ勇気はなかった。


 そして。



 隣には北山のロッカー。


 まだ、事務室から戻っていない。




 どこかで聞いたことのあるフレーズが頭に浮かぶ。


♫別れた人に会った 別れた直後に会った


 この後の自分がそうなるのが嫌で急いで着替えているのだが。


「何回目だよっ」


 衣装の小さなフックを外していくが、イライラしているせいか、いつもより装飾の紐に引っかかってしまう。


「ここ絡まってるからじゃねぇの?」


 後ろから声がして、ジャケットの背中に気配がした。


「北山」


「借り物なんだから、大事にしろよな」


 後ろの縺れを解いただけでなく、ジャケットを袖から抜いて差し出した。


「あのさ」


 一拍おいて続ける。


「誤解されてる気がしたから、いちお言っとく」


「誤解?」

 何を…



「オレがイヤだって言ったこと。
 おまえがイヤなんじゃなくて、その…」


 北山は軽く拳を握る。


「おまえにあんなこと…されたら、照れてどうしようもないのに、人前で、しかも、写真撮られて、オレ…ホントに恥ずかしくて…」


「北山」

 わざわざそれを言いに来てくれたのか。


 たまらず目の前の赤ずきんを正面からぎゅっと抱きしめた。


「わっ、ちょ、藤ヶ谷!」


 すっと北山の体を離す。


「オレが抱きしめるの、イヤ?」

「な、何だよ、いきなり訊かれたって」



「イヤ?」


 目を見てもう一度訊く。



「人前では、イヤだ」

 北山は目を逸らす。



「誰もいなかったら?」

お月様が見てる 14→←お月様が見てる 12



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (47 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
114人がお気に入り
設定タグ:藤北 , 藤ヶ谷太輔 , 北山宏光
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:lettuce | 作成日時:2022年9月11日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。